敵対的TOB
敵対的TOB
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/02 16:02 UTC 版)
友好的TOBに対して、経営陣の賛同を得ずに行われる企業買収は敵対的企業買収 (hostile takeover) と言われ、その場合の株式公開買付けを、敵対的TOB (hostile bid of offer) と呼ぶ。会社乗っ取りとほぼ同義。 敵対的TOBでは経営陣は買収対抗策を講ずるとともに、株主に対して買付け価格が低いとして買付けに応じないように勧告する。敵対的TOBでは、買付け価格が引き上げられることがしばしば見られる。しかし買付け価格が十分高く設定された場合には、経営陣が抵抗を止め買収に応ずる判断をすることもある。 経営陣の買収対抗策としては、白馬の騎士 (white knights) と呼ばれる第三の友好的な企業による合併や新株引受けにより、買収を避けることがある。また、買収対象とされた企業が、買収しようとする企業を逆に買収すると脅し、買収を思い留まらせようとする戦法もある。これは「パックマン・ディフェンス」と呼ばれる。このほか自社の重要資産を他企業に営業譲渡することで買収する側からみた「買付けする価値」自体を失わしめ買収意欲を削ごうとすることがある。これを大規模に行うことを「焦土作戦」と呼ぶ。 「M&A」も参照 さまざまな買収対抗策は、アメリカ合衆国で発達したが、イギリスでは公開買付制度そのものを厳格に運用する代わりに、買収対象となった企業の経営者に対抗策を取ることなく中立を保つこと(中立義務)を求める考え方が見られる。たとえば、イギリスでは「シティ・コード」として知られる民間自主規制がある。コードでは、議決権で30%以上を取得しようとする者に対して、ほかのすべての株主に対して、買付けの申し込みをすること(強制申込)、またその対価を現金で支払うことを求めている。これにより買い付ける側は、未取得株式すべてを買い取る現金を用意する必要がある。このことが、安易な買収を抑制すると考えられている。 日本では前述のライブドアによるニッポン放送買収騒動や村上ファンドによる阪神電鉄株取得のように新興企業や投資ファンドによる敵対的TOBへの拒否感が強く、株主からもTOBへの賛同を得られないこともあり、2010年代前半までは敵対的TOBが行われたケースは少なく、成功した事例もごく僅かだった。しかし、2010年代後半になると、新型コロナウイルスによる保有資金の増加やコーポレート・ガバナンスによる株式持ち合い解消の促進、2022年4月に行われた東京証券取引所の市場再編を背景として敵対的TOBを含むM&A事例が増加しており、中には伊藤忠商事や日本製鉄、SBIホールディングスなどの大企業が敵対的TOBを主導したケースもある。
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