撃ちっぱなし能力・同時多目標攻撃能力
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/09 01:40 UTC 版)
「AIM-120 (ミサイル)」の記事における「撃ちっぱなし能力・同時多目標攻撃能力」の解説
従来の中距離空対空ミサイルの主役であった旧型のスパロー・ミサイルは、セミアクティブ・レーダー・ホーミング(SARH)誘導方式であった。この方式は、飛翔時の誘導にミサイル外部の助けが必要であり、発射母機のレーダーから目標に対してレーダー波を放射し続け、ミサイルは目標からの反射波をレーダー・シーカーで捉える事で追尾を行い誘導される。発射母機はミサイルの発射後も敵に向けてレーダー波を放射し続け、ミサイルが外れるか衝突するまでその状態を維持しておく必要があった。従って自機のミサイルが飛翔中は、基本的に発射母機は回避行動が行えず、発射母機が誘導を継続する限り敵からの攻撃に対して脆弱になる。ミサイルの誘導も1発ずつしかできなかった。 AMRAAMは、レーダーに放射器まで搭載する事で、アクティブ・レーダー・ホーミング(ARH)方式、すなわちミサイル自身のレーダー放射による自律誘導を可能にした。これにより発射母機はミサイルを放った段階で回避行動が行える「撃ちっぱなし能力」が備わり、航空機の生存性が向上する。しかし、細いミサイルの弾頭部に内蔵されたレーダーはサイズの制約から性能が限られており、遠距離目標はレーダーの微弱な反射波が検出できないことで誘導不可能である。そのままでは実用上は短射程となるため、AMRAAMではアクティブ・レーダー・ホーミング方式に加え他の誘導方法も用いる事でその欠点を補った。すなわち、ミサイルを発射後、レーダー・シーカーが目標を捉える距離までは他の誘導方式で中間誘導を行い、目標接近後にアクティブ・レーダー・ホーミング方式で最後まで誘導する(終端誘導)というものである(LOBLとLOALも参照) AMRAAMでは、目標接近までの中間誘導を慣性誘導と指令誘導(COLOS)で行う。目標接近後はアクティブ・レーダー・ホーミングで終端誘導を行う。発射母機は終端誘導が開始された時点で回避行動に移る事ができる。短距離の発射では、中間誘導を行わずに発射前からミサイルのレーダーで終端誘導に入ることで、発射母機は発射直後に行動の自由を得ることができる。中間誘導時に発射母機が攻撃を受けた場合は指令誘導を中止して回避運動を取ることも可能であり、ミサイルは慣性誘導によって定められた方位角で飛翔を続け中間誘導を継続することでアクティブ・レーダーの覆域内(ボアサイト内)に目標を捉えることを期待する。アクティブレーダーに検知されるとそのまま終末誘導へと切り替えて目標の撃墜を図る。ただし、このような慣性誘導だけの中間誘導では命中率が低下する。これらの誘導システムにより、AMRAAMは発射母機の火器管制システム(FCS)にもよるが複数目標への同時攻撃も可能とした。
※この「撃ちっぱなし能力・同時多目標攻撃能力」の解説は、「AIM-120 (ミサイル)」の解説の一部です。
「撃ちっぱなし能力・同時多目標攻撃能力」を含む「AIM-120 (ミサイル)」の記事については、「AIM-120 (ミサイル)」の概要を参照ください。
- 撃ちっぱなし能力同時多目標攻撃能力のページへのリンク