揚水機の運転
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/20 20:15 UTC 版)
以下に示すのは、一般的な揚水機の起動過程である。ここでは三相同期発電電動機とポンプ水車 (VFR-1RS) で構成される可逆式揚水機を一例とする。 運転制御回路の切り替え操作揚水機の運転はシーケンス制御回路により自動化されている。揚水機は発電時と揚水時とでは異なる運転シーケンス制御回路を持っており、運転員は揚水時の運転シーケンス制御回路へと切り替える操作を行う。また、主回路においても発電運転時と揚水運転時とでは回転の向きが逆となるため、主回路の中途に設けられた断路器(相切替断路器, G/M 断路器)によって三相のうち二相が入れ替えられる。 補機運転操作圧油装置や冷却水ポンプなど、揚水機の運転を支える補機を運転する操作を行う。 揚水発電所では補機もまた大容量である。従って停止中は補機を停止させておくことで、発電所内における消費電力を低減し運転コストの削減が図られている。 運転操作補機を運転させ、揚水機の運転に必要な準備が完了したことを確認し、運転員は運転操作を行う。 入口弁開放入口弁(主弁)が開放される。これによりケーシングが水で満たされるが、現段階ではまだ全閉したガイドベーンによって水は遮られ、水車に流れ込むことはない。 回転子浮上回転子をごくわずかに浮上させ、スラスト軸受面での摩擦抵抗を低減し始動を円滑化する。多くはスラスト軸受面にギヤポンプなどを用いて送油し、回転子を油圧で押し上げる方法をとる。 水面位押し下げポンプ水車は発電時に落差を有効に利用するため、常時水に浸っている場合がほとんどである。揚水始動時においては水の抵抗が揚水機の始動を困難とさせるため、あらかじめドラフト(吸出し管)の水面位を下げておく。多くはドラフト内に大量の圧縮空気を送り込む方法をとる。 始動始動装置により、揚水機を始動させる。この過程は始動方式による。 並列電動機が同期速度に達したら、自動同期装置によって同期検定を行い、電力系統と並列接続する。このあと揚水運転操作を行うまでは、ポンプ水車は空転した状態を維持する。この状態を揚水待機状態という。 この状態から界磁を強弱させることで無効電力を調整し、同期調相機として調相運転を行うことができる機種もある。 揚水運転操作運転員は、揚水待機状態から揚水運転に移行する操作を行う。 水面位上昇ドラフト内部に充てんした圧縮空気を排気し、水面位を上昇させポンプ水車を水で浸す。 ガイドベーン開放回転するポンプ水車はドラフト内の水を押し上げ始め、全閉したガイドベーンにかかる水圧が高まってゆく。この水圧がガイドベーンを開いてすぐに揚水開始できるに足りる揚圧力(プライミング水圧)に達したら、ガイドベーンを開放する。ガイドベーンは揚程に応じた適正な開度へと自動的に調整される。 揚水開始
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