推論の原則
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/10 23:35 UTC 版)
人のもつ観察と仮説の関係についての思い込みや信念は、その人が観察したものを証拠とみなすかどうかに影響する。この思い込みや信念は人がどのように観察を証拠として利用するかにも影響する。たとえば、地球があたかも動いてないように見えることは地球中心の宇宙論(天動説)の証拠として受け取れるかもしれない。しかし、太陽中心の宇宙論(地動説)の十分な証拠が示され、地球があたかも動いていないように見えるわけが説明されれば、初期の観察は証拠としては強く割り引かれる。 理性的な観察者たちがそれぞれ違った背景の信念を持つ場合、同じ科学的証拠から違った結論を導く可能性がある。たとえば、フロギストン説に立っていたジョゼフ・プリーストリーは、酸化水銀(II)の分解に関する彼の観察を燃素を用いて説明した。対照的に、元素の理論を構築していたアントワーヌ・ラヴォアジエは、同じ観察を酸素に言及することで説明した。観察を証拠として導くような観察と仮説の間の因果関係は存在せず、因果関係はむしろ、観察を証拠として確立しようとする人間により提供されることに留意すべきである。 より正式な背景にある、信念の効果を特徴づける方法はベイズ推定である。ベイズ推定では、信念は人の自信を示す確率(パーセンテージ)で表される。最初の確率(事前確率)からはじめて、それから証拠を観察したあとにその確率をベイズの定理を使って更新していく。結果として、事前確率(結論に関連した事前の観察)が違うなら、二人の独立した同じ現象の観察者は理性的に違った結論へ到達する。しかし、二人が互いにコミュニケーションを許されれば、最終的に合意に到達することができる。(オーマンの合意定理(英語版)による)。 どの観察が証拠になるかを決めるかについての背景にある信念の重要性は三段論法などの演繹に見られる。もし、命題のどれかが真でないとされれば、結論も真ではないとされる。
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