推論に対する二重過程の説明の問題点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 05:00 UTC 版)
「二重過程理論」の記事における「推論に対する二重過程の説明の問題点」の解説
上記のように、推論に対する二重過程説は古い理論である。しかし、エヴァンズによれば、二重過程説はそれ自身を古い、論理学者のパラダイムから、他の種類の推論に応用する新しい理論として適用した。そして二重過程説は過去よりも影響力を増しているが、そのことは疑わしい。エヴァンズは以下の5つの誤謬を提示している: すべての二重過程理論は本質的に同じである。思考の二つのモードあるいはスタイルを提示するすべての理論が関連しているとする傾向があるので、それらの理論は結局「二重過程理論」という傘の言葉のもとで一緒くたにされてしまう。 システム1とシステム2の処理のもとには二つのシステムしかない。人の二重過程タスクのパフォーマンスのもとには、明らかに二つ以上の認知システムがある。よって、処理が異なる進化の歴史を持ち、それぞれが複数のサブシステムをもつ二つの心で行われているという変更が理論に対して行われた。 システム1の過程は認知バイアスの原因であり、システム2の過程は規範的に正しい反応の原因とされる。システム1とシステム2は両方とも規範的答えにたどり着くことがあるし、両方とも認知バイアスの原因ともなる。 システム1の処理は文脈化されているのに対して、システム2の処理は抽象的である。最近の研究では信念と文脈はシステム1と同じようにシステム2の処理にも影響を与えるということを示している。 早い処理はシステム2の過程ではなくシステム1の使用を示しているとされる。処理が早いというだけでは、それがシステム1によって行われていることを意味しない。経験や異なったヒューリスティックはシステム2の早い処理に影響することがありうる。 Osmanによって提示された推論に対する二重過程説に対するもうひとつの議論は、システム1とシステム2の提案されている二分法は、達成されたプロセス()の範囲を十分に収容していないというものである。Moshmanはプロセスは2種類ではなく、4種類あるべきだと提案した。暗黙的ヒューリスティックプロセス、暗黙的なルールに基づくプロセス、明示的ヒューリスティックプロセス、明示的なルールに基づくプロセスの4つである。もうひとつの細かい分割は以下の通りである。暗黙的行動中心プロセス、暗黙的非行動中心プロセス、明示的行動中心プロセス、明示的非行動中心プロセス。(つまり、4分類では暗黙的-明示的の区別と、手続き的-宣言的の両方の区別を反映している。)二項対立的なプロセスタイプがあるかどうかの問いに対して、多くは代わりに暗黙的と明示的の間に連続体を組み込んだ単一システムのフレームワークを提案してきた。
※この「推論に対する二重過程の説明の問題点」の解説は、「二重過程理論」の解説の一部です。
「推論に対する二重過程の説明の問題点」を含む「二重過程理論」の記事については、「二重過程理論」の概要を参照ください。
- 推論に対する二重過程の説明の問題点のページへのリンク