抵抗性品種の植栽・開発
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/03 05:38 UTC 版)
「マツ材線虫病」の記事における「抵抗性品種の植栽・開発」の解説
かつては抵抗性の北米種を植えることが行われた。テーダマツやリギダマツが代表的である。特にテーダマツは原産地では樹高40-50mに達することもある大型種で在来アカマツと比べて苗木の成長もきわめて速いなどと対マツ枯れ以外の面も期待されたが、地上部に比べて根の発達が貧弱で風で損傷しやすいことや、外来種問題などから現在は廃れてしまった。他にも在来のクロマツにバビショウ(タイワンアカマツ、P. massoniana)を掛け合わせた雑種などが開発されたことがある。バビショウはアジア産種でありながら線虫に対して強い抵抗性があり、この雑種も抵抗性を持ったという。ただし、これも線虫には抵抗性があっても他の害虫に弱いという欠点があり広い普及には至らなかった。 現在主流なのは在来種の抵抗性個体の選抜である。マツ枯れ被害の大きな森林でも枯死せず生き残った個体から種子を採り、発芽させた苗木に線虫を投与して枯死しなかったものを選抜する。実生の子は親のクローンではないために必ずしも抵抗性を持つとは限らないために、線虫の接種による抵抗性の検定が欠かせず、手間と費用がかかるのが欠点である。挿し木などの無性繁殖では子供は親の形質をそのまま受け継ぐために、抵抗性系統の母樹から低コストで効率的に生産ができると考えられている。一方でマツは一般的に挿し木による繁殖が難しいことで知られており、効率的な発根・定着条件を探す研究が続けられている、近年の研究では発根率の良い若い苗木時代に植物ホルモンのサイトカイニンを投与してやると発根率の良い挿し穂が量産できるとされている。アカマツには抵抗性系統が比較的多く見つかっているが、クロマツの抵抗性系統は少ない。また、これらについても抵抗性はあるが、樹形や成長速度などの面は考慮されておらず課題が残る。 病理的に不明な部分があること、日本人の遺伝子組み換え作物に対する嫌悪感もあってか遺伝子組み換えの抵抗性マツを作ろうという動きは殆どない。海外種との交雑実験も前述のように廃れてしまった。
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