戦争観・靖国神社に対する見解
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/13 07:00 UTC 版)
「後藤田正晴」の記事における「戦争観・靖国神社に対する見解」の解説
極東国際軍事裁判を傍聴したことがある。被告人は主に国の指導者がであり、裁判中はきちんとして微動だにしないことが一般的であったが、後藤田が見に行ったときはソ連側の証人の日であり、関東軍特種演習がソ連を敵国として準備するためのものである言質を取るためにA級戦犯として証言をさせられた鈴木貞一が、悔しさで歯ぎしりしている姿を見た。企画院総裁であった頃の鈴木を知る後藤田はもともと彼に良い印象を持っていなかったが、「そんなこと言わなくてもいいじゃないか」と思いつつも気の毒に感じている。 中曽根が総理大臣として靖国神社を公式参拝した翌年の1986年8月14日、後藤田は翌日の終戦記念日における首相の参拝有無について以下のような内閣官房長官談話を発表している。 「昨年実施した公式参拝は、過去における我が国の行為により多大の苦痛と損害を蒙った近隣諸国の国民の間に、そのような我が国の行為に責任を有するA級戦犯に対して礼拝したのではないかとの批判を生み、ひいては、我が国が様々な機会に表明してきた過般の戦争への反省とその上に立った平和友好への決意に対する誤解と不信さえ生まれるおそれがある」ことなど「諸般の事情を総合的に考慮し、慎重かつ自主的に検討した結果、明8月15日には、内閣総理大臣の靖国神社への公式参拝は差し控えることとした」 そのうえで、「公式参拝は制度化されたものではなく、その都度、実施すべきか否かを判断すべきものであるから、今回の措置が、公式参拝自体を否定ないし廃止しようとするものでないことは当然である。政府は引き続き良好な国際関係を維持しつつ、事態の改善のために最大限の努力を傾注するつもりである」「各国務大臣の公式参拝については、各国務大臣において、以上述べた諸点に十分配慮して、適切に判断されるものと考えている」としている。 後藤田の考えとしては、靖国問題は日本人の心に係る内政問題であり本来は外国に言われる筋合いの問題ではないというものであった。また後藤田自身も、参拝に公私の別はありえないという認識のもとで単独で国務大臣として靖国参拝を行っている。奉賛会の大槻文平を通じてA級戦犯の分祀を靖国側に打診したこともあったが、憲法第20条の絡みもあってそれ以上の介入は控えた。 一方で、内閣総理大臣在任中の小泉純一郎による靖国神社参拝が問題になっていた頃、参拝に反対する自民党議員の勉強会に講師として呼ばれた後藤田は「くだらない負け惜しみは言わない方がいい」と発言している。「つくる会」の新しい歴史教科書(扶桑社発行)についても、反対の立場をとった。
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