戦争の理論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2015/09/20 09:35 UTC 版)
コーベットは海軍戦略の研究に先立って、戦争に関する理論の考察の必要性を指摘している。海軍戦略とは海洋を本質的な要素とする戦争の原則だが、海軍だけでは戦争を遂行できないことが強調され、海軍戦略の焦点とは「戦争において陸軍・海軍の相補的な役割を決める」ものであると論じる。この理論的考察においてコーベットはクラウゼヴィッツを参照し、「他の手段による政治の継続」という戦争の見方を検討する。クラウゼヴィッツは「さまざまな現実の制約がなければ、我と敵の暴力の相互作用によって戦争は無制限に暴力性を拡大する」と考え、それを絶対戦争のと定式化した。その上で「戦争が常に政治的交渉の継続の文脈におかれているため、現実の戦争は絶対戦争にはなりえない」と論じた。したがって軍事作戦は明らかに政治にはない固有の性質を持つものの、戦争計画は政治的な条件に従ってその程度を縮小しなければならない。そのためコーベットは「彼我の論争の程度から戦争の性格を決定しなければならない」と論じる。 戦争の政治理論を構築するため、コーベットは戦争の政治目的を積極性・消極性に大別する。ここで攻勢・防勢という用語を用いないのは、両者が対立しているという誤解を招くためである。しかし積極・消極の区分も完全ではない。ここでは積極的な政治目的が戦争において攻勢を、そうでなければ防勢をもたらす傾向があると考える。ただし攻勢・防勢がそれぞれ持つ総体的な利益の認識は必要である: 攻勢 敵の無防備を発見してそこに決定的な打撃を与える意志に、本質的な優位を求める 防勢 敵の攻撃力を弱体化させながら我の打撃力を準備する手段であり、本質的に反撃への前段階である またコーベットはクラウゼヴィッツが取り上げた戦争の制限・無制限について検討し、戦争の目的を制限された目的と無制限な目的に区別した。この目的を達成するためにどれだけの努力が費やされるかが重要な問題で、これには全面的な殲滅戦争から威力偵察の実施までのさまざまな程度がある。コーベットはこのような分類の可能性の論拠として、画一的な絶対戦争の理論を生み出したナポレオン戦争では、制限・無制限の区別に基づく戦争理論が確立されていたことを高く評価している。
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