慢性ヒ素中毒の症状
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/25 04:16 UTC 版)
ヒ素侵入後数年~十数年して、慢性ヒ素中毒が発生する。症状として皮膚の色素沈着(点状またはびまん性)、白斑(点状または雨だれ状)、盛り上がった硬化(keratosis,角化症)、ボーエン病、皮膚癌(基底細胞癌、有棘細胞癌)、肺癌、腎臓癌、膀胱癌、壊疽などが発生する。皮膚の変化の部位は露出部もあるが、特に衣服に覆われている部分に出現する場合も多い。症状が複数みられたり、多発することもある。皮膚の変化は、長年にわたってヒ素そのものが既に生体から消失しても診断の根拠になるので、重要な所見である。この時期に毛や爪のヒ素の検査を行っても無意味である。初期には唇や口腔内の色素沈着がみられることがある。発癌以外の長期毒性としては、肝障害(黄疸や肝硬変)、末梢血管障害(四肢末端のチアノーゼやレイノー現象、四肢末端の切断など)、烏脚病(blackfoot disease; 黒色になる壊疽の一種、台湾で地方的に発生)、貧血(ヘム生合成障害による)などがある。癌などはただちに発生するわけではないから、その前に皮膚の変化で診断することが重要で、診察には皮膚科医の参加が必須である。 WHOは飲料水のヒ素レベルの上限として、0.01 mg/L (10 ppb) を推奨している。この値は、WHO水質基準ガイドライン公開時の検出限界に基づいて定められた。最近の報告によると、この基準値よりも遥かに低い濃度(例えば0.00017 mg/L (0.17 ppb) )であっても、長期間飲用するとヒ素中毒を起こすという。ヒ素の発癌性については、複数の根拠がある。但し、国によっては井戸水の砒素濃度を50ppbで飲用可としている。
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