意識の大局的な障害
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/07/08 04:07 UTC 版)
「意識に相関した脳活動」の記事における「意識の大局的な障害」の解説
臨床家は意識の障害された状態を“昏睡”状態や“遷延性意識障害” (PVS : persistent vegetative state)、“最小意識状態” (MCS : minimally conscious state)と称する。ここでは、意識のまったく無い昏睡状態や遷延性意識障害や全身麻酔状態から、意識的感覚が変動し限定された状態である最小意識状態や夢遊病やてんかんの複雑部分発作 (Schiff 2004) などまでの異なる意識のレベルについて述べる。 最小意識状態の患者がアクセス可能な意識状態や意識的体験の種類は (主に痛みや不快、突発性の感覚性知覚などの) 最小限のものであると推定され、健康な人の脳が経験可能な意識状態に比べて非常に少ない。また、脳死状態ではいかなる覚醒も体験も無いとされている。心理的なトラウマを避けるため、全身麻酔状態の患者はいかなる体験もしないようになっているが、緊急事態のために手術中の覚醒レベルは調節されている。 意識に必要な最小限の神経活動の基準に関する認められた理論が存在しなければ、(フロリダのテリー・シャイボの事例のように正常な睡眠脳波の移り変わりが見られ、反射的に眼や四肢を動かしたり微笑んだりする) 遷延性意識障害の患者と、(例えば、異なる眼球運動などの) 有意味な方法で (たまに) コミュニケーションが可能で、意識の兆候を示す最小意識状態の患者とを区別することは大抵の場合、臨床環境では難しい。脳機能イメージングはこの時非常に有用である。 BOLD fMRIにより、重篤な脳損傷により植物状態となった患者が、テニスをしたりその人の家の全ての部屋を回ることを想像してもらった際に健常者と同じような脳活動を示すことが証明されている (Owen et al. 2006)。(無動性無言を含む) このような大域的な意識障害の患者の様々な脳機能イメージング研究により、前頭前皮質の内側部や外側部、頭頂連合野などの様々な領域に広がる皮質ネットワークの機能障害が意識の大局的な消失に関係していることが示された (Laureys 2005)。同様に、側頭葉でのてんかん発作における意識の障害は、前頭連合野と頭頂連合野の脳血流量の減少と視床の内背側部などの正中部の脳構造の血流の増加に伴って観察される (Blumfeld et al. 2004)。
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