影響を受けている作品
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/29 06:45 UTC 版)
「鏡のヴィーナス」の記事における「影響を受けている作品」の解説
イタリア、特にヴェネツィア派の画家たちによる裸婦画やヴィーナス像はベラスケスに影響を与えている。しかしながらプラーターによればベラスケスのこの絵は「独自の美術様式を確立している。多くの絵画の影響を受けてはいるが、直接に模範にしたような作品は存在しない。学者がそんな作品を探そうとしても無駄なことだ」としている。 この絵が影響を受けている絵画とはティツィアーノの『ヴィーナスとキューピッドとライチョウ (Venus and Cupid with a Partridge, 1550年 ウフィツィ美術館蔵)』、『ヴィーナスとオルガン奏者とキューピッド (Venus and Cupid with an Organist, 1548年頃 プラド美術館蔵)』、特に『ウルビーノのヴィーナス』、ヴェッキオの『横たわる裸婦 (Reclining Nude)』、ジョルジョーネの『眠れるヴィーナス』などである。すべて豪奢な織物にもたれかかったヴィーナスの構図で、屋外を描いたヴェッキオとジョルジョーネの絵でもこの構図は変わらない。 中央に置かれた鏡はイタリアルネサンス最盛期の画家たちからの影響を受けている。ティツィアーノ、ジローラモ・サヴォルド (en:Girolamo Savoldo)、ロレンツォ・ロットなどで、彼らは単なる柱や装飾物などとは異なり、鏡を主要な題材として絵画に表現した。ティツィアーノとルーベンスはこの絵が描かれる以前に、鏡に見入るヴィーナスの絵を描いている。二人ともスペイン宮廷と深い関係のあった画家で、ベラスケスも彼らの作品を目にする機会は多かったものと思われる。しかしながら「細いウェストと張り出したヒップで描かれたこの女性は、古代の彫刻に影響を受けている丸みをおびたイタリアの裸婦画との共通点はない」 『鏡のヴィーナス』が画期的な点は、主題の人物像が背中を向けて鑑賞者から距離を置いていることにある。すでに版画ではジュリオ・カンパニョーラ (en:Giulio Campagnola)、アゴスティーノ・ヴェネツィアーノ (en:Agostino Veneziano)、ハンス・シーボルト・ベーハム (en:Hans Sebald Beham) などの作品や、当時マドリードで見ることが出来た古代彫刻の複製にも同様の構図の作品は存在しており、ベラスケスも目にしていたはずである。現在フィレンツェのピッティ宮殿で見ることができる『眠れるアドリアーネ (Sleeping Ariadne)』は当時ローマにあり、ベラスケス自身が王室コレクションのために1650年から1651年にかけてその複製を依頼している。現在ルーブル美術館にある、『鏡のヴィーナス』と同様にウエストからヒップの曲線が強調された『ボルゲーゼのヘルマプロディートス (Borghese Hermaphroditus)』の彫刻複製もマドリードに送られていた。前例があるとはいえ、このような前例の作品要素を組み合わせ、絵画に再構成したベラスケスの作品は独自の物であると言える。
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