寒天培地を使った培養
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/08/20 15:16 UTC 版)
平板培地や斜面培地の場合、主に目的の微生物を培地の表面に白金耳などを用いて塗抹し、室温あるいはふ卵器などで一定期間培養して微生物を増殖させる。塗抹された微生物はそれぞれが塗抹された場所で分裂増殖を繰り返してコロニーを形成する。独立したコロニーの一つ一つは、基本的にそれぞれ一個の微生物細胞に由来すると考えられるため、平板培地ではそこから微生物を分離して新たな培地上に移し、さらに培養することで個々の微生物を単離することが出来る(純粋培養)。また塗抹する代わりに、目的の微生物を含む材料を寒天が固化する前に加えて固化させた後で培養する方法(混釈培養法)もある。 また、固形物表面から出現するものを見るためには、平板培地上に試料を乗せ、そのまま培養する直接接種法がある。 半流動高層培地の場合、主に目的の微生物を白金耳などに取り、培地に穿刺して接種した後で同様に培養する。好気性菌は培地の表面に、偏性嫌気性菌は培地の底部に、通性嫌気性菌は表面から底にかけて増殖する。また運動性のない細菌は穿刺した軌跡の部分のみで増殖するが、運動性がある細菌は培地全体で増殖する。 特殊な使い方として、寒天表面を一種の作業台として使う場合がある。たとえば、水生不完全菌の分離には、流水より集めた試料を顕微鏡下で観察して胞子を探し、これをマイクロピペットで吸い上げ、寒天培地表面に滴下する。そのままでは混在していた細菌類などが繁殖してくる恐れがあるので、白金線で胞子のそばの寒天面に静かに触れると、寒天表面に僅かに存在する遊離水分が寒天面と針の間に満たされ、胞子はその水に引き込まれる。そのまま寒天表面を針で引き摺れば、胞子は針先に付着して移動するので、試料を滴下した点から数mm離したところへ移動させれば、発芽した胞子を単独で切り離せるようになる。 分子生物学系の実験系で、大腸菌などを用いてクローニングやスクリーニングを行う場合は、プラスミドをとりこんだ(形質転換した)細胞を選別するために、種々の抗生物質を添加した平板培地が利用される。プラスミドにはマーカー遺伝子として抗生物質に対する耐性遺伝子が組み込まれているため、形質転換した細胞のみが増殖し、コロニーを形成することができる。コロニーを均等に分散させるために、菌を含んだ溶液を培地上に撒き、スプレッダーと呼ばれるガラスの棒で広げる操作を行うことが多い。
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