密度汎関数理論において相当する定理
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/03/01 03:20 UTC 版)
「クープマンズの定理」の記事における「密度汎関数理論において相当する定理」の解説
「ヤナックの定理」も参照 コーン=シャム(KS)密度汎関数理論(KS-DFT)は、ハートリー=フォック理論のものと非常に似た考え方でDFT版のクープマンズの定理(DFT-クープマンズの定理と呼ばれることがある)を認める。この定理は、 N {\displaystyle N} 電子の系の第一(垂直)イオン化エネルギー I {\displaystyle I} を対応するKS HOMOエネルギー ϵ H {\displaystyle \epsilon _{H}} の負数と同一視する。より一般的には、この関係は、KS系が非整数個の電子 N − δ N {\displaystyle N-\delta N} ( N {\displaystyle N} は整数; δ N → 0 {\displaystyle \delta N\to 0} )を持つゼロ度アンサンブルについて記述している時でさえも成り立つ。 N + δ N {\displaystyle N+\delta N} 個の電子を考える時、無限小の余剰電荷はN電子系のKS LUMOに入るが、正確なKSポテンシャルは「微分不連続性(derivative discontinuity)」と呼ばれる定数によって急に変化する。垂直電子親和力はLUMOエネルギーと微分不連続性の和の負数と厳密に等しい、と主張することができる。 ハートリー=フォック理論におけるクープマンズの定理の(軌道緩和の無視による)近似的立場とは異なり、厳密なKSマッピングにおいてこの定理は厳密であり、軌道緩和の効果を含んでいる。この厳密な関係の大雑把な証明は3段階からなる。はじめに、全ての有限な系について、 I {\displaystyle I} は密度の | r | → ∞ {\displaystyle |\mathbf {r} |\to \infty } 漸近形を決定する( n ( r ) → exp ( − 2 2 m e ℏ I | r | ) {\textstyle n(\mathbf {r} )\to \exp \left(-2{\sqrt {{\frac {2m_{\rm {e}}}{\hbar }}I}}|\mathbf {r} |\right)} のように減衰する)。次に、(物理的な相互作用のある系はKS系と同じ密度を持つため)当然の帰結として、どちらも同じイオン化エネルギーを持つ。最後に、KSポテンシャルは無限遠においてゼロであるため、KS系のイオン化エネルギーは、定義により、そのHOMOエネルギーの負数であり、したがって最終的に ϵ H = − I {\displaystyle \epsilon _{H}=-I} となる。 これらはDFTの形式化において厳密な言明であるのに対して、近似交換-相関ポテンシャルの使用により計算されるエネルギーは近似的となり、しばしば軌道エネルギーは対応するイオン化エネルギーと全く異なる(数eVの差さえ生じる)。 調整手順によってDFT近似にクープマンズの定理を「課す」ことができ、それによって実際の応用においてその関連予測の多くが改善される。近似DFTにおいて、エネルギー曲率の概念を使ってクープマンズの定理からのずれを高精度に見積ることができる :157。
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