定常宇宙論
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/01 03:16 UTC 版)
「オルバースのパラドックス」の記事における「定常宇宙論」の解説
しかし科学者の描く宇宙像は、20世紀前半に根本的な変化を受けることになった。 アインシュタインやド・ジッター、フリードマンによる一般相対性理論の宇宙論への適用と、スライファーとハッブルによる遠い銀河の赤方偏移の発見という洗礼を経て、1930年代に宇宙は膨張しているという考えが示された。 宇宙は遠くの銀河をわれわれから光速以上で運び去り、よって我々が観測可能な宇宙には限界がある。 1948年にはガモフらによって、宇宙はビッグバンにより始まり有限の年齢を持つとした現在広く受け入れられている見方が示された。 しかし、有限の宇宙に回帰するかのようなこの宇宙論はすべての人にただちに受け入れられたのではなかった。 ハーマン・ボンディやトマス・ゴールド、フレッド・ホイルらは、同じころ同様に当時の観測事実を説明できるものとして定常宇宙論の考えを提案した。 これは遠い銀河の赤方偏移から宇宙が膨張していることは認めたものの、空間から新たに物質と星が生まれているのだとし、宇宙は過去も未来も定常であるとしたものである。 定常宇宙論の宇宙では、膨張が光速を超える境界(事象の地平面)から外は見えないものの、宇宙は無限の過去から続いており、やはり空を見上げた視線はいずれもやがて遠い過去の星へとたどり着く。 しかし、これら遠くの星々の光は赤方偏移によって引き伸ばされることとなるため人の目で見ることはできず、宇宙は暗闇に見えるのだとする。 1950年代、著書の中で「オルバースのパラドックス」の名で夜空の暗闇のパラドックスへ人々の注意を向けさせたのは、まさにこのボンディであった。 この著作は広く読まれ、後にビッグバン宇宙論が主流となってからも、このパラドックスそのものとこの解決が広く浸透することとなった。 1965年には宇宙背景放射が発見され、宇宙がどの方向にも十分に一様でほとんど黒体放射に近いマイクロ波の放射で覆われていることが明らかとなった。 この一様な背景放射は、定常宇宙論が導くような遠い過去の恒星の赤方偏移としてはうまく説明できず、ビッグバンにより始まる有限の年齢の宇宙という宇宙像が受け入れられるようになり、定常宇宙論は支持を失っていった。
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