うちゅう‐こう〔ウチウ‐〕【宇宙項】
読み方:うちゅうこう
アインシュタインの一般相対性理論に基づく重力場の方程式に導入された項。1917年に、アインシュタインが膨張も収縮もしない静的な宇宙モデル(アインシュタイン宇宙)を得るために導入し、その係数は宇宙定数とよばれる。重力場方程式において、宇宙項は銀河などの引力によって宇宙がつぶれないよう、斥力としてはたらく。のちにハッブルらの観測によって膨張宇宙説が正しいことがわかり、アインシュタイン自ら宇宙項の導入について誤りを認めた。近年、超新星や宇宙背景放射の詳細な観測から、宇宙が加速的に膨張していることが明らかになり、再び宇宙項の存在が支持されている。この斥力(負の圧力)の源は暗黒エネルギーとよばれているが、その正体はわかっていない。
宇宙定数
(宇宙項 から転送)
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2024/03/30 13:19 UTC 版)
宇宙定数(うちゅうていすう、cosmological constant)は、アインシュタインの重力場方程式の中に現れる宇宙項(うちゅうこう)の係数。宇宙定数はスカラー量で、通常Λ(ラムダ)と書き表される。
- ^ 図解 相対性理論がみるみるわかる本 - 著:佐藤勝彦、ISBN 4-569-62888-5 p72
- ^ 『偉大なる失敗:天才科学者たちはどう間違えたか 科学者の試行錯誤の歴史 追体験』マリオ・リヴィオ著、千葉敏生訳 早川書房 2015年 原著 Brilliant Blunders
- ^ Cormac O'Raifeartaigh and Simon Mitton, Einstein's "biggest blunder" - interrogating the legend, arXiv:1804.06768. (須藤靖「アインシュタインは本当に『人生最大の失敗』と言ったのか」、『UP』551号(2018年9月)、30-37頁、に引用。)
- ^ C・ロヴェッリ『すごい物理学講義』河出文庫、2019年、263頁。
宇宙項
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2020/12/02 17:11 UTC 版)
「アインシュタイン方程式」の記事における「宇宙項」の解説
アインシュタインの1916年のオリジナル論文には含まれておらず、アインシュタイン方程式は Gμν = κTμν の形で書かれていた。アインシュタインは、1917年の論文で方程式に「宇宙項」を加えて Gμν + Λgμν = κTμν の形に書き換えた。Λ は宇宙定数を表す。宇宙項は、正負の符号によっては、重力に対する反重力(万有斥力)として機能する。 アインシュタインがこの項を導入した理由については諸説あるが、一般に有名なのは、彼自身が信じる静止宇宙モデルを実現するためという説である。1917年論文の宇宙モデルは重力と宇宙項による反重力とが釣り合う静止宇宙だった。当時、宇宙膨張は発見されていなかった。しかしこのモデルは不安定であり、僅かな摂動で膨張または収縮に転じる(静止宇宙とならない)性質を持つことが後にアレクサンドル・フリードマンにより示された。 1929年にハッブルが宇宙の膨張を観測的に示した後、1931年にはアインシュタイン自身により「人生最大の過ち」として消去された。しかしながら、近年の宇宙のインフレーション理論や素粒子物理学との関連の中で、宇宙項(に相当する斥力)を再び導入して考えることが通常行われており、むしろ重要な意味を与えている場合がある。観測的宇宙論において、宇宙膨張を加速させている謎のエネルギーとして、ダークエネルギーが提案されている。ダークエネルギーは方程式上では宇宙項である。 詳細は「一般相対性理論」を参照
※この「宇宙項」の解説は、「アインシュタイン方程式」の解説の一部です。
「宇宙項」を含む「アインシュタイン方程式」の記事については、「アインシュタイン方程式」の概要を参照ください。
- 宇宙項のページへのリンク