妊婦に対する死刑執行
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/24 15:28 UTC 版)
市民的及び政治的権利に関する国際規約第6条では、妊婦に対する死刑執行を禁じることが規定されている。 日本では、刑事訴訟法第479条2項において、「死刑の言渡を受けた女子が懐胎しているときは、法務大臣の命令によって執行を停止する。」と規定されている。ただし、戦後、実際にこの条文が適用された事例はない。確実な記録が存在する限りでは日本の歴史上、最後に死罪が確定した妊婦は、明治時代初頭の原田きぬだが、彼女は出産まで執行が猶予された後に斬首に処され、3日間梟首に処せられたという。 大多数の国では、犯行時または裁判時に妊娠または乳幼児を養育している者に対し、特別な処遇を定めている。そのような処遇を定めている国の中では、妊婦に死刑判決を言い渡さない国が最も多く、エチオピア・キューバ・ケニア・ザンビア・ジャマイカ・赤道ギニア・中国などが該当する。また、その対象を妊婦だけでなく、3歳未満の乳幼児を養育している女性にも適用した国として、ルーマニア(1989年末に死刑を廃止)があった。 日本と同様に、出産まで死刑の執行を猶予する国(例:アラブ首長国連邦・韓国・台湾・トルコなど)のほか、出産後一定期間まで死刑執行を猶予する国(例:イラク・インドネシア・サウジアラビア・リビアなど)、妊婦や乳幼児を養育している女性には一定期間死刑執行を猶予する国(例:アルジェリア・ソマリア・ベトナムなど)、妊婦には死刑執行を猶予するか減刑する国(インド・バングラデシュ・ミャンマーなど)、妊婦に死刑判決は言い渡すが減刑する国(例:クウェート)、すべての女性が死刑を免除される国(モンゴル・グアテマラ)などの例もある。なお、タイでは死刑を宣告された囚人は、国王に刑の軽減を請願することが認められているが、同国内務省は女性の囚人による請願を受理するように勧告しているという。 一方で、妊産婦に対する特別な処遇を規定していない国(カリブ海沿岸の英語圏諸国の一部)や、妊婦が処刑されたという情報がある国(イラン)もある。またアムネスティ・インターナショナルによれば、拘禁中の女性が拷問・虐待を受けて流産した事例が数多く報告されている。
※この「妊婦に対する死刑執行」の解説は、「女性死刑囚」の解説の一部です。
「妊婦に対する死刑執行」を含む「女性死刑囚」の記事については、「女性死刑囚」の概要を参照ください。
- 妊婦に対する死刑執行のページへのリンク