契約書の捏造・改竄
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/19 12:30 UTC 版)
「チャフ・フレア・ディスペンサー」(敵のレーダーなどを撹乱させるために使用する熱球やアルミ箔の放出器)の英国メーカーBAEシステムズの代理店だった山田洋行は2001年3月、旧防衛庁との契約時に約1億8,000万円相当の過大請求を行っていた。 2001年12月に防衛庁(当時)職員が調査を行ったところ同等品との単価と異なっていたため、直接メーカーに問い合わせた結果判明した。本来契約前に山田洋行を通して防衛庁に提出されるはずのメーカー作成の見積書が提出されず、代わりに山田洋行がメーカーの用紙を無断で偽造し見積書を作成、防衛庁に提出していたことが時事通信などのマスコミ各社により伝えられた。防衛庁の調査が行われた際、別人をメーカー幹部に仕立てて調査を妨害するなど隠蔽工作の疑いも表面化している。また航空自衛隊輸送機C-130用の同じ装置についても防衛省の調査により水増しの疑いが浮上している。 BAEシステムズによる装備品以外にも海外メーカーの請求書を偽造・変造する手口で組織的、恒常的に水増し工作を行っていた。これらの作業は山田洋行社内では「マークアップ」と呼ばれ、メーカーの用紙に類似する書類を印刷業者に作成させ、原本と同じ字体を使い水増し単価を記載するなどの方法で、4、5倍の値段を付けていた。当時、山田洋行の米津佳彦社長は「(東京地検特捜部の)捜査妨害になるので、(水増しが)あるとかないとかそういうことについてお話しできない。」というコメントを発表した。 山田洋行は輸入代理店として2002年度から666件の契約を防衛省と交わしており、うち中央調達契約分は116件に上る。防衛省は海外メーカー29社に対し、山田洋行が提出した見積書を送付し真性であるか確認を行い、8社から回答があり、39件の契約分のうち8件について回答があった。この8件中、5件が水増しされている可能性が高く、海外メーカーが山田洋行に対して提出したものと異なることが分かった。(※防衛省の規定により、防衛省との商社間で締結される契約は海外メーカーの見積書を提出する必要があるが、山田洋行はこの見積書を偽造していた。) 山田洋行の決算書には平成18年3月末売り上げは340億円、売り上げ総利益が35億円と記載される。したがって粗利は10・4%となり平成17年3月も粗利は10.59%と記載されている。業界最大手の三菱商事の粗利は5.5%、双日が4.9%となっているが、これら企業の2倍となる山田洋行のこの高い粗利について民主党の大久保議員は山田洋行社長の米津が参考人招致された際、高い経営数値について水増しに関連している疑いがあるとして確認を行っている。米津社長は水増し行為をさすマークアップについて、「あの、私ども商社でございますので、ご存じのように他の製造会社が製造したモノを購入し、適切なマージンを乗せて他に販売するという業態。マージンをオネストすることをマークアップと呼んでいる」と語った。その後、米津社長が部長を務めていた管理部門が水増し決裁を行っていたことが明らかになる。数日後、米津社長は水増しを認めこれら水増しについて米津社長は防衛省へ出向き謝罪を行っている。 防衛省の調査で2010年10月までに25億7102万円の過大請求が確認され、延滞金7億9180万円と併せて他の契約の支払い債務と相殺や返還請求を行っている。
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