地上要塞
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/08/04 02:58 UTC 版)
20世紀半ば頃まで多く建造・運用されていた要塞が有する砲台(要塞砲)は、砲撃に晒されても簡単には破壊されないように掩体内に収められる事が多いが、対応できる方向を増やすために砲塔化される事もあった。はじめから要塞用に設計された砲塔はフランスのマジノ線に設置された隠蔽式砲塔やフィリピンのコレヒドール要塞近海に設置されたフォート・ドラムなどがある。これらの要塞用砲塔は固定式であるため重量制限をほぼ考えなくても構わないことから強固な防御力をもたせることが出来た。要塞の戦略的価値が下落すると要塞専用砲の開発は下火となり、既存の戦車や艦船の砲ないし砲塔ごと流用されることが多くなった。 戦車が進化を遂げ、要塞が容易に迂回されてしまうようになった第二次世界大戦以降は大規模な要塞が作られることが減ったが、迂回しづらい隘路を閉塞する意図などで要塞が築かれた。戦車は車体部分を埋めて即席トーチカすることができるが、はじめから戦車の砲塔を要塞に埋め込んでしまうこともままあった。例えばアルバニア、スイス、オーストリアなどで、旧式戦車の砲塔をコンクリートに埋めてトーチカとすることが行われていた。初の全周砲塔を備える戦車であるルノー FT-17からして、後の第二次大戦前夜でマジノ戦を強化するための即席トーチカとして多数が設置された。対するドイツ軍も旧式化した戦車の砲塔を要塞建設に用いたり、新規にパンター戦車の砲塔を利用したトーチカを開発し、防衛戦に使用していた。 現代では対艦ミサイルで代替され姿を消していっているが、かつては重要港湾や海峡航路の防備のための沿岸要塞ないし沿岸砲が各地に築かれていた。沿岸砲は海上目標を狙うためのものであるから、海側さえ向いていればよく、全周周回する砲塔式の必要性はあまりなかったが、艦船や戦車の砲塔をターレットごと流用することがよくあった。前者の例では戦艦との交戦も想定し、余剰となった戦艦の砲塔を利用した巨大なものも多く、戦艦の艦砲射撃にも対抗可能とされていた。後者の例では大戦中のドイツ軍がフランス沿岸地帯に築いた大西洋の壁に鹵獲したフランス製戦車の砲塔を設置したり、戦後のフィンランドがソ連からT-55の砲塔を購入して沿岸要塞に設置していたりした マジノ線の砲塔 マニラ湾のフォート・ドラム マニラ湾のフォート・ドラムの35.6cmカノン砲 陸揚げして流用されたシャルンホルスト級戦艦「グナイゼナウ」の主砲塔 同じく陸揚げされた「グナイゼナウ」の副砲塔 V号戦車パンターの砲塔を改造・流用した東方の壁砲塔
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