豊川鉄道デキ52形電気機関車とは? わかりやすく解説

Weblio 辞書 > 辞書・百科事典 > 百科事典 > 豊川鉄道デキ52形電気機関車の意味・解説 

豊川鉄道デキ52形電気機関車

(国鉄ED29形電気機関車 (初代) から転送)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/18 00:04 UTC 版)

ナビゲーションに移動 検索に移動
豊川鉄道デキ52形電気機関車
豊川鉄道デキ52形デキ52
(竣功当時・日本車輛製品案内より)
基本情報
運用者 豊川鉄道鉄道省日本国有鉄道岳南鉄道
製造所 日本車輌製造東洋電機製造
製造年 1927年
製造数 1両
廃車 2015年
主要諸元
軸配置 Bo - Bo
軌間 1,067 mm (狭軌
電気方式 直流1,500V架空電車線方式
全長 11,240 mm
全幅 2,540 mm
全高 4,153 mm
運転整備重量 40.70 t
台車 板台枠式2軸ボギー台車
動力伝達方式 1段歯車減速吊り掛け式
主電動機 直流直巻電動機 MT15B × 4基
主電動機出力 100 kW (電圧650V・1時間定格)
歯車比 3.89 (18:70)
制御方式 抵抗制御直並列2段組合せ制御
制御装置 電空単位スイッチ式手動加速制御
制動装置 AEjR[1]自動空気ブレーキ手ブレーキ
定格速度 31.2km/h
定格出力 400 kW
定格引張力 4,600 kgf
テンプレートを表示

豊川鉄道デキ52形電気機関車(とよかわてつどうデキ52がたでんききかんしゃ)は、豊川鉄道(現在のJR東海飯田線の一部)が1927年(昭和2年)に新製した直流電気機関車である。

保有事業者である豊川鉄道の戦時買収・国有化に伴って本形式も国鉄(当時の鉄道省)籍へ編入され、戦後の形式称号規定改訂に際してED29形(初代)と改番された。

概要

1927年(昭和2年)に日本車輌製造(機械部分)および東洋電機製造(電気部分)で1両(デキ52)が新製された。既に在籍した電機50形が車体前後に機械室を備える凸形車体であったのに対し、本形式は主要機器を全て車体に内蔵し、車体前後にデッキを備える箱型車体に改められた。前後妻面には砂箱を備え、乗務員室扉は車体前面の向かって左側に寄せて設置されている。車両番号は楕円形の真鍮製プレートで表記され、左右側面の前後エンド部分に設置された。また側面中央部には同じく真鍮製プレートによる豊川鉄道の社章が取り付けられた。

台車は日本車輌製造製の板台枠式2軸ボギー台車を装着し、パンタグラフは1両あたり2基搭載した。

本形式の同系機としては、豊橋鉄道デキ451(元・田口鉄道デキ53形デキ53)や近畿日本鉄道デ21(元・伊勢電気鉄道521形521)などがある。

1943年(昭和18年)の豊川鉄道の戦時買収に伴って、本形式も国鉄に継承された。

国鉄の保有する電気機関車となった後は機器の標準化改造が行われ、主電動機はTDK-522-AからMT15Bに、パンタグラフも国鉄制式のPS13へ交換された。妻面に設置された砂箱については、豊川鉄道保有当時に一旦撤去され、国有化後に改めて台車に砂箱を新設した。

買収後も私鉄時代の番号のまま、引き続き飯田線で使用され、1952年(昭和27年)に国鉄形式を付与されてED29形(初代) (ED29 1) となった。1959年(昭和34年)3月に廃車となり、岳南鉄道に譲渡された。

岳南鉄道への譲渡後

岳南鉄道譲渡後のED29形
(岳南富士岡 2009年12月)

岳南鉄道は当時電車線の架線電圧が直流600Vだったので入線後に降圧工事を施工し、形式番号は国鉄時代のED29形ED29 1のまま、主に貨物列車の牽引や比奈駅での入換用として使用された。電動カム軸式であった制御装置は1965年(昭和40年)に電磁空気単位スイッチ式に改められ[2]1969年(昭和44年)の岳南線の架線電圧1,500Vへの昇圧に際しては、再び昇圧工事・配線引き直し等が施された。

その後は前照灯位置変更・車体色及び連結器周りの塗装変更を経て長らく使用されていたが、貨物輸送衰退により岳南富士岡駅構内に休車として留置され、非常用予備機として車籍を保持していたが、10年以上手入れをされていないため傷みが激しく、両エンドのホイッスルが撤去され、致命的な破損箇所(車輪・台車周りのクラック)もあって予備機としても使用は厳しい状況にあった。しかし2008年平成20年)10月以降に2エンド側運転席窓欠落の修復など、傷んだ車体の修繕作業が同駅構内で実施された。

2013年(平成25年)に鉄道事業の移管に伴い岳南電車へ引き継がれた後、2015年(平成27年)3月31日付で廃車された[3]。廃車後は岳南富士岡駅構内に留置された後、2021年(令和3年)8月21日に同駅構内に開業する「がくてつ機関車ひろば」にて展示される予定である[4]

脚注

[脚注の使い方]
  1. ^ 鉄道ピクトリアルNo.431の寺沢・登山の報告と同No.652の澤内の報告による。ただし、世界の鉄道'76の日本の私鉄車両 諸元表(各鉄道会社の回答をもとに作成されたもの)ではかつて一時期の国鉄電車で標準的に採用されていたAMJブレーキ、つまりゼネラル・エレクトリック社製J三動弁によるAVRブレーキと記載されている。
  2. ^ 『私鉄電気機関車ガイドブック東日本編』179頁
  3. ^ 『鉄道車両年鑑2015年版』243頁
  4. ^ 岳南富士岡駅(仮称)電気機関車公園 2021年8月21日オープン

参考文献

書籍
  • 日本車輌製造『日本車輛製品案内 昭和4年(電気機関車)』日本車輌製造、1929年。
  • 日本車両鉄道同好部・鉄道史資料保存会『日車の車輌史 図面集-戦前私鉄編 上』鉄道史資料保存会、1996年。ISBN 978-4885400964
  • 日本車両鉄道同好部・鉄道史資料保存会『日車の車輌史 図面集-戦前私鉄編 下』鉄道史資料保存会、1996年。 ISBN 978-4885400971
  • 日本車両鉄道同好部・鉄道史資料保存会『日車の車輌史 写真集-創業から昭和20年代まで』鉄道史資料保存会、1996年。 ISBN 978-4885400988
雑誌
  • 「私鉄専用鉄道の電気機関車 岳南鉄道」『世界の鉄道'69』、朝日新聞社、1968年10月、 76 - 77頁。
  • 「日本の私鉄及び会社専用線電気機関車諸元表(1968年3月調べ)」『世界の鉄道'69』、朝日新聞社、1968年10月、 178 - 185頁。
  • 「日本のローカル私鉄 岳南鉄道」『世界の鉄道'76』、朝日新聞社、1975年10月、 70 - 73頁。
  • 「日本の私鉄車両 諸元表」『世界の鉄道'76』、朝日新聞社、1975年10月、 162 - 163頁。
  • 寺沢新・登山昭彦「甲信越・東海地方の私鉄 現況9 岳南鉄道」『鉄道ピクトリアル』第431巻、電気車研究会、1984年4月。
  • 澤内一晃「現有私鉄概説 岳南鉄道」『鉄道ピクトリアル』第652巻、電気車研究会、1998年4月、 211-215頁。

関連項目




英和和英テキスト翻訳>> Weblio翻訳
英語⇒日本語日本語⇒英語
  

辞書ショートカット

すべての辞書の索引

「豊川鉄道デキ52形電気機関車」の関連用語

豊川鉄道デキ52形電気機関車のお隣キーワード
検索ランキング

   

英語⇒日本語
日本語⇒英語
   



豊川鉄道デキ52形電気機関車のページの著作権
Weblio 辞書 情報提供元は 参加元一覧 にて確認できます。

   
ウィキペディアウィキペディア
All text is available under the terms of the GNU Free Documentation License.
この記事は、ウィキペディアの豊川鉄道デキ52形電気機関車 (改訂履歴)の記事を複製、再配布したものにあたり、GNU Free Documentation Licenseというライセンスの下で提供されています。 Weblio辞書に掲載されているウィキペディアの記事も、全てGNU Free Documentation Licenseの元に提供されております。

©2025 GRAS Group, Inc.RSS