唐人川と「千葉氏所有池」
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/03/06 06:05 UTC 版)
「浄ノ池特有魚類生息地」の記事における「唐人川と「千葉氏所有池」」の解説
黒田は浄の池の調査と同時に、池の水が流出入する唐人川(とうじんがわ)と呼ばれる小規模な河川に着目し調査を行った。この唐人川は2018年現在も旧浄の池所在地付近から、伊東市街の住宅地を縫っておよそ北東方向へ流れ、池から約1キロほど流下した、現、川口公園(国道135号伊東バイパスなぎさ橋の上流方向)付近で、伊東大川(通称、松川)右岸に合流し、そのすぐ下流で海へ注いでいる。前述した『豆州志稿』および『伊東記』の唐人川の記述に、昔唐船此処に漂着せしを以つて名づくと云うとあるように、数百年前までの唐人川はある程度大きい河川であったと考えられている。しかし、黒田が調査を行った1912年(大正10年)の時点での唐人川は、一間幅の小溝に過ぎずと、報告書で記されたように極めて小さな河川であり、浄の池と同様に微温湯であり白い湯気が立ち昇っていたという。 2018年現在の唐人川は所々が暗渠となっており、見た目は普通の溝渠に過ぎない。しかし、かつてこの小さな水路を通じて浄の池の異魚は海との間を行き来しており、浄の池に生息する複数種の汽水魚にとって唐人川は重要な役割を果たしていた河川である。黒田は唐人川に小振りではあるが異魚5種すべてが生息するのを確認している。 さらに黒田は唐人川沿いにある別の池に着目し調査を進めた。浄の池とは別のこの池(以下、「千葉氏所有池」と表記する)は、千葉殉事という人物の私有地にあり、報告書にも具体的な所在地は記されておらず、現存もしていないため正確な位置は不明である。だが、浄の池から流出する唐人川沿いに所在していたことから、浄の池のあった現:和田1丁目から、唐人川河口のある現:渚町にかけた一帯にあったものと考えられる。黒田が調査した時点で「千葉氏所有池」は大小2つ存在し、大きい方は約40坪(約132平方メートル)、小さい方は約20坪(約66平方メートル)であった。この池も元々は大きな池であったものが次第に埋め立てられ大小2つの池になったという。 2つの池のうち、大きい方の池にオキフエダイ(方言、毒魚)が4尾生息しているのを黒田は確認している。また、埋め立てられた際に多数のオキフエダイが捕獲されたという話を池の所有者より聞き取り報告書にも記載している。一方、小さい方の池にはオキフエダイは生息していないものの、浄の池には生息していない別種の魚類2種(はいれん、まくち)が確認され、報告書にも写生図とともに記載されている。 報告書に記載された「千葉氏所有池」に生息する2種の魚類を下記に示す。浄の池での記載と同様、研究史的な意味として捉え、1921年(大正10年)に作成された調査報告書を元に記述を行う。ただし、この2種及び「千葉氏所有池」は天然記念物には指定されなかった。
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