古典上での記述
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/25 08:58 UTC 版)
日本では古くから毒キノコとして広く知られており、『今昔物語集』では和太利(わたり)という名で登場し、ヒラタケと偽ってこの菌を入れた汁物でもてなす毒殺未遂事件が取り上げられている(二十八巻「金峰山別当食毒茸不酔語第十八」)。また、同じく二十八巻の十七話として、「藤の樹に発生した平茸を食したことによる中毒事件(左大臣御読経所僧酔茸死語第十七)」が題材とされているほか、同じ巻の第十九話(比叡山横川僧酔茸誦経語第十九)として、平茸とおぼしき茸を持ち帰ったところ、「これは平茸ではない」という者と「いや、平茸だから食べられる」という者とがあり、汁物にして食したところ中毒を起こした、と記述されている。後者の二つの例においては「和太利」の名こそ登場しないものの、これらもまたツキヨタケによるものではないかと推測されている。 江戸時代末期に著わされた続三州奇談では、本種とおぼしきキノコを指して闇夜茸の名が当てられ、「又闇夜茸と云う物あり。闇中に二・三茎を下げて歩けば、三尺四方は明るくして昼の如し:多く積む処には遠望火光に似てけり:是を煮て食ふに、吐瀉して多く煩ふ:味も劣れり、必ず食ふべからずとや」と記述されている。 同じく、江戸時代の天保6年(1835年)に坂本浩然が著した「菌譜(第二巻毒菌之部)」にも、「月夜蕈―又一種石曽根等ノ朽木横倒スルモノニ生ズ状チ硬木耳ノ如ク紫黒色夜間光アリ余野州探薬ノ時友人櫟齋卜同ク山中ノ栗樹ノ立枯ニ生ズルモノデ見ルニ香蕈ノ如シ傍テ是チ得テ家ニ帰リ酒肴トス食スルモノ皆腹痛、吐瀉急ニ樺皮チ煎ジ服サシメテ漸ク解ス故ニ知ル此菌ノ大毒アルコトヲ余ハ幸ニシテ免ガルルコトヲ得タリ謹ズンバアル可カラズ(石曽根などの倒木上に発生するもので、形状はキクラゲに似て紫黒色を呈し、夜になると光る:また立ち枯れたクヌギに発生しているシイタケに似た茸をみかけたが、これを酒の肴として食したところ、食べた者はみな腹痛と吐瀉とをきたしたので、カンバの樹皮を煎じて服用してことなきを得た:この茸に激毒が含まれているのは明らかなので、食用にしてはいけない)」との記述がある。「黒紫色で夜になると光る」菌が、現代の分類学上でなにに当たるのかは不明だが、「クヌギの立ち枯れ木に生じた、香蕈(=シイタケ)類似の茸」については、ツキヨタケを指すものである可能性が考えられる。
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