北村小松とは? わかりやすく解説

北村小松

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/07/02 02:29 UTC 版)

北村 小松
(きたむら こまつ)
『さしゑ』創刊号(1955年)
誕生 (1901-01-04) 1901年1月4日
青森県三戸郡八戸町(現・八戸市
死没 (1964-04-27) 1964年4月27日(63歳没)
職業 劇作家小説家脚本家
国籍 日本
最終学歴 慶應義塾大学英文科卒
ジャンル 映画シナリオ、戦争協力小説、ユーモア小説
文学活動 日本空飛ぶ円盤研究会
代表作 『人物のゐる街の風景』(1926年)
子供 金子亜矢子(女優・声優)[1]
親族 北村益(父親)[2]
宇佐美淳(甥)[3]
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北村 小松(きたむら こまつ、1901年(明治34年)1月4日 - 1964年(昭和39年)4月27日)は、日本の劇作家、小説家、脚本家。

略歴

青森県三戸郡八戸町(現・八戸市)生まれ。八戸中学校[4]を経て慶應義塾大学英文科卒。在学中から小山内薫に師事して劇作を学び、卒業後に松竹キネマ蒲田研究所に入社。松竹の『マダムと女房』(1931年)など多くの映画シナリオを書く。戦後はユーモア小説作家に転じた。『人物のゐる街の風景』(1926年)が初期代表作で、初期は左翼文学にも手を染めたが、戦時下は戦争協力小説を多く書き、スパイものを編纂した。ほか翻訳がある。終戦後の1948年(昭和23年)に公職追放を受けて活動停止追放処分となる(1950年(昭和25年)に解除)。1964年(昭和39年)、心臓病のため死去。墓所は小平霊園

人物

日本空飛ぶ円盤研究会などで北村と親交があった三島由紀夫は、

「氏の内の決して ちない少年のこころ、あらゆる新奇なもの神秘なもの宇宙的なものへの関心は、そのナイーブな、けがれのない熱情は、世俗にまみれた私の心を洗つた。氏は謙虚なやさしい人柄で、トゲトゲした一般小説家の生活感情なんぞ超越してゐた」

と述べている[5]。また、北村が妻について書いた文章「わが契約結婚の妻」に触れ、

「私はこれこそ真の人間通の文章だと感嘆し、早速その旨を氏へ書き送つたが、今にしてみると、それは氏の心やさしい遺書のやうな一文であつた。それは逆説的な表現で、奥さんへの愛情と奥さんの温かい人柄を語つた文章であるが、人間が自分で自分をかうだと規定したり、世間のレッテルで人を判断したり、自意識に苦しめられたり、……さういふ愚かな営みを全部見透かして、 ぢかに人間の純粋な心情をつかみとるまれな能力を、氏が持つてゐることを物語つてゐた」

と追悼している[5]

また北村は、小松左京SF作家を志すきっかけになった小説家でもある。1941年(昭和16年)1月から12月まで『少国民新聞』に北村が連載した科学小説「火」を読んで原子爆弾を知り[6]、北村がこの連載で解説していた原子爆弾が連載から僅か4年後に広島長崎に実際に使用された事に衝撃を受け、「SFとは遠い未来の出来事ではなく、人類の近未来を著わす重要な役割を果たしている」と認識しSF作家を目指したとNHKのインタビューに答えている[7]

著作

著書

  • 猿から貰つた柿の種 戯曲集 原始社 1927
  • 北村小松シナリオ集 映画知識社 1930
  • 小市民街 天人社 1930
  • 限りなき鋪道 中央公論社 1932
  • 肥料と花 先進社 1932
  • 陰知己漫語 時潮社 1933
  • 情炎の都市 中央公論社 1934
  • 虹晴 岡倉書房 1935
  • 望空夜話 岡倉書房 1935
  • 街頭連絡 現代ユーモア小説全集 第4巻 アトリヱ社 1935
  • 初化粧・港街 新鋭大衆小説全集 第2巻 アトリエ社 1936
  • 髯と口紅 新作ユーモア全集 第12巻 春陽堂 1937
  • 呼声 岡倉書房 1937
  • 国際間諜暗躍秘録(編)東海出版社 1938
  • 航空記、翼 岡倉書房 1939
  • 防諜とスパイ實話(編)大日本雄辯會講談社 1939.12
  • 燃ゆる大空 大日本雄弁会講談社 1940
  • 燃ゆる大陸 博文館 1940
  • 海軍爆撃隊 興亞日本社 1940.3
  • 南海少年船 稲津廷一共著 鶴書房 1941
  • 船底の秘密 偕成社 1941
  • 竜巻 誠文堂新光社 1941
  • 南極海の秘密 海洋冒険 同盟出版社 1941
  • 爆音 岡倉書房 1941
  • 世紀の除夜 蒼生社 1941
  • 見えぬ閃光 鶴書房 1942
  • 湖ホテル 国際スパイ小説 同盟出版社 1942
  • 熱帯の風 淡海堂出版部 1942
  • 祖国 新正堂 1942
  • 仏印探険隊 科学探険小説 東港書店 1943
  • 基地 晴南社 1943
  • 太陽の丘 感激小説 梧桐書院 1948
  • 失われた地図 生活文化社 1948
  • 白猫別荘 新太陽社九州支社 1948
  • 東京のお嬢さん 東成社 1952(ユーモア小説全集)
  • 糞坊主 小説朝日社 1952
  • けれども私は 東方社 1954
  • 風雪の歌 東方社 1954
  • 幸福は虹の色 東方社 1954
  • 結婚期 東方社 1954
  • 銀幕 東方社 1955
  • 男は沢山いるけれど 東方社 1955
  • 哀愁の書 東方社 1956(東方新書)
  • 青空夫人 東方社 1957
  • 現代の怪奇 科学で解けぬ謎の物語 出版協同社 1960
  • オーナードライバー 文藝春秋新社 1961
  • 大衆文学大系 23 講談社 1973

翻訳

映画シナリオ

  • 1921年 山暮るゝ 松竹キネマ研究所
  • 1922年 若き人々 松竹蒲田
  • 1924年 少女の悩み 松竹蒲田
  • 1925年
    • 当世玉手箱 松竹蒲田
    • 正ちゃんの蒲田訪問 松竹蒲田
  • 1926年 街の人々 松竹蒲田
  • 1927年
    • 久造老人 松竹蒲田
    • 炎の空 松竹蒲田
    • 村の医者とモダンガール 松竹蒲田
  • 1928年
    • 岡惚れ御無用 松竹蒲田
    • 彼と東京 松竹蒲田
    • 彼と田園 松竹蒲田
    • カボチャ 松竹蒲田
    • 飛行機花婿 松竹蒲田
  • 1929年
    • 珍客往来 松竹蒲田
    • 彼と人生 松竹蒲田
    • 現代婿選び 松竹蒲田
    • 恋愛第一課 松竹蒲田
  • 1930年
    • 黒百合の花 松竹蒲田
    • 抱擁 松竹蒲田
    • 女よ!君の名を汚す勿れ 松竹蒲田
    • 処女入用 松竹蒲田
    • お嬢さん 松竹蒲田
  • 1931年
  • 1932年
    • 勝敗 松竹蒲田
    • 兄さんの馬鹿 松竹蒲田
    • 上陸第一歩 松竹蒲田
    • 恋愛御法度会社 松竹蒲田
    • 撮影所ロマンス・恋愛案内 松竹蒲田
    • 不如帰 松竹蒲田
  • 1933年
    • 頬を寄すれば 松竹蒲田
    • ラッパと娘 松竹蒲田
  • 1934年 玄関番とお嬢さん 松竹蒲田
  • 1935年
    • 夢うつゝ 松竹蒲田
    • 果樹園の女 松竹蒲田
    • 吹けよ恋風 松竹蒲田
    • せめて今宵を 松竹蒲田
  • 1936年 真夜中の酒場 新興東京
  • 1937年 あばれもの 松竹大船
  • 1938年 姿なき侵入者 松竹大船
  • 1940年 海軍爆撃隊 東宝映画東京

脚注

  1. ^ 「芸術二代シリーズ」『新婦人』3月号、文化実業社、1954年。 
  2. ^ 北村 小松”. 八戸市. 2023年3月18日閲覧。
  3. ^ 『昭和十七年版 日本映畫年鑑』、大同社、1932年、p. 657。 
  4. ^ 北村は八戸中学校が八戸高校に衣替えしてから新校歌の作詞をしている。
  5. ^ a b 三島由紀夫 (1964年4月30日). “空飛ぶ円盤と人間通――北村小松氏追悼”. 朝日新聞夕刊 (朝日新聞社) 三島 2003, pp. 31–33に収録。)
  6. ^ 小松 et al. 2007, p. 722
  7. ^ あの人に会いたい』#290、2011年(平成21年)10月29日放送。

参考文献

関連項目

外部リンク


北村小松

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三島由紀夫」の記事における「北村小松」の解説

脚本家小説家1955年昭和30年7月発足した日本空飛ぶ円盤研究会創立メンバーで、翌年この会に入会した三島知り合い交流した。同会には他に、星新一黛敏郎石原慎太郎などが入会した

※この「北村小松」の解説は、「三島由紀夫」の解説の一部です。
「北村小松」を含む「三島由紀夫」の記事については、「三島由紀夫」の概要を参照ください。

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