化学と機能
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/01/14 04:05 UTC 版)
他のGDGT類と同様に、クレナルカエオールは独特の疎水性および親水性領域を持つ膜脂質である。長い非極性炭化水素鎖が疎水性であるのに対して、エーテル結合したグリセロール頭部は極性で親水性である。ほとんどの生物において、細胞膜は脂質二重膜から構成される。リン脂質はそれらの疎水性、非極性炭化水素尾部を互いの方を向けて、それらの親水性、極性頭部が細胞質あるいは細胞外部の極性環境と交わるように外側を向けて配列している。この構造化は疎水効果によって促進される。GDGTsは2つの親水性頭部を持つため、細部膜中に二重層ではなく脂質単層を形成する。これが、GDGT生産古細菌を生命の全ての系統の中で例外的なものとしている。元々は、GDGT膜脂質は高温および酸性への生命の適応であると考えられていた。単層脂質の両側は二重膜の凝集を促進する弱い分子間力ではなく共有結合によって繋がれているため、典型的な二重膜よりも安定である。この仮説は、一部の極限環境細菌が独自の膜貫通エーテル結合型GDGT類似物質を合成するという観察結果によって支持される。GDGT類の環部分は超好熱条件への適応でもあるかもしれず、GDGTの炭化水素長鎖中の環の数は温度依存性がある。クレナルカエオールはその炭化水素鎖の一方に2つのシクロペンチル部分ともう一方に1つのシクロヘキシルおよび2つのシクロペンチル部分を有する。 しかしながら、クレナルカエオールや他のGDGT類が中熱水性環境中に生息する生物によって生産されるという発見は、超好熱適応仮説に疑問を投げ掛けた。クレナルカエオールの特有のシクロヘキシル部位は遠洋生活への適応であることが提唱されている。これは、シクロヘキシル部位が炭化水素鎖の一方に「よじれ」を生み出し、高温下では好まれるが穏和な温度下では好まれない膜脂質の密な充填を防ぐためである。
※この「化学と機能」の解説は、「クレナルカエオール」の解説の一部です。
「化学と機能」を含む「クレナルカエオール」の記事については、「クレナルカエオール」の概要を参照ください。
- 化学と機能のページへのリンク