動的ロットサイズ決定問題とは? わかりやすく解説

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動的ロットサイズ決定問題

読み方どうてきろっとさいずけっていもんだい
【英】:dynamic lotsizing problem

概要

在庫管理モデル一種で, 各期の需要確定的に既知であるが必ずしも一定ない場合考える. すなわち, 計画期間T\,中の各期t\,需要d_{t}\,, 製品1個あたりの発注費用c_{t}\,, 発注量に無関係に必要な発注費用K_{t}\,, 製品1個の1期間あたりの在庫維持費h_{t}\,所与のとき, 計画期間開始時の在庫が0として, 総費用最小化するような各期の発注量を求め問題.

詳説

 経済発注量(EOQ)モデルが「需要既知一定」という仮定をおいていた. これに対して, 動的ロットサイズ決定問題 (dynamic lot sizing problem)では, 需要既知であるものの, 期によって需要量が異なることを許す. それゆえモデル動的EOQとも呼ばれ, また, ワグナーとウィッティン(Wagner and Whitin)が考案したことから [1] , ワグナー・ウィッティンモデルの名で呼ばれることもある. なお, MRP計算において, 期別の正味所要量から品目ごとにロット編成し計画オーダ作る問題は, 動的ロットサイズ決定問題にほかならない.

 ここで, 期間の長さ T\, 計画立案することを考える. 各期 t\, 需要 d_{t}( > 0) \, 既知, 各期 t\, 製品1個当り発注費用c_{t}\, , 発注量に無関係に1回発注対する各期 t\, 発注費用K_{t}\, , 製品1個を1期保持するための各期 t\, 在庫保管費用h_{t} \, , t=0 \, における初期在庫量を0とする. また, リードタイムは0すなわち発注同時に納入され, 納入期首にされる. 需要対す品切れ許されない.

ここで, y_{t}\, t\, 期の発注量, I_{t} \, を各期の期末在庫量としたときに, 総費用最小化するような各期の発注量を決定する問題は, 以下のように定式化できる.



\begin{array}{ll}
\mbox{min.} & \displaystyle{\sum_{t=1}^{T}} \biggl[ K_{t} \delta(y_{t}) + c_{t}y_{t} + h_{t} I_{t} \biggr] \\
\mbox{s. t. } & I_{t} = \displaystyle{\sum_{j=1}^{t}} (y_{j} - d_{j})\; \; \; (t=1,\ldots, T), \\
 & \quad \ I_{t} \geq 0 \ \ \ (t=1,\ldots, T), \\
 & \quad \quad I_{0} = 0, \\
 & y_{t} \geq 0, \ \ \ (t=1,\ldots, T), \\
\end{array}
\,


ただし \delta(y_{t})\, y_{t}>0\, のとき 1 \, , さもなくば 0\, である.

 次に, 本問題最適解を得ることを考えよう. 本問題最適解を得る上で, 「最適な発注方策は, ゼロ在庫発注方策, すなわち



y_{t}I_{t-1}=0, \ \ \ t=1,2,\ldots,T
\,


という関係を満足する」という重要な性質がある. この式が意味するところは,

 この性質使い, 動的計画法によって最適解を見つけることを考える. 1 \leq i \leq j \leq T + 1\, について, l_{ij}\, を, i \, 期から, i+1,\ldots,j-1 \, 期までの需要満足するために t\, 期においてかかる費用とすれば,



l_{ij} = K + h \sum_{t=i}^{j-1}(t-i)d_{t}
\,


となる. ここで, f_{i} \, を「 i \, 以降, 最適な方策したがったときの費用」とすると,



f_{i} = \min_{j>i}(l_{ij} + f_{j}), \ \ \ i=1,\ldots,T
\,      (1)\,


と書ける. f_{T+1}=0 \, としたとき, この再帰方程式 i=T,T-1,\ldots,1 \, と後から前に向かって計算することで, 順次  f_{i} \, 得られる.


図1:動的ロットサイズ決定問題における最短路ネットワーク

図1:動的ロットサイズ決定問題における最短ネットワーク



 ちなみに,  l_{ij} \, を点  i \, から点  j \, への長さ考えたとき, 本問題ネットワークにおける最短路問題とみなすことができる(図1). 点 1 \, から点 T+1 \, への最短路の長さは, 1期から  T \, 期までの需要満足する上で最小費用となる.

 動的計画法によって最適解を得る際の計算の手間は  {\rm O}(T^2) \, であるが, 最近の研究では  {\rm O}(T) \, の手間で最適解得られるアルゴリズム開発されている [2]. また, 近似解を得るための種々のヒューリスティック解法提案されている [5].

 動的ロットサイズ決定問題は, 発注量や期末在庫量に上限がある場合, 品切れ許し品切れ時の需要バックオーダーされる場合, 多段階場合など, ざまざま拡張なされている [2] [4].




参考文献

[1] H. M. Wagner and T. M. Whitin, "Dynamic Version of the Economic Lot Size Model," Management Science, 5(1958), 89-96.

[2] J. Bramel and D. Simchi-Levi, The Logic of Logistics, Springer, 1997.

[3] H. L. Lee and S. Nahmias, "Single-Product, Single-Location Models," in Logistics of Production and Inventory, S. C. Graves, A. H. G. Rinnooy Kan and P. H. Zipkin, eds., North-Holland, 1993.

[4] S. C. Graves, "A Review of Production Scheduling," Operations Research, 29(1981), 646-675.

[5] E. A. Silver, D. F. Pyke and R. Peterson, Inventory Management and Production Planning and Scheduling, Third Edition, John Wiley & Sons, 1998.




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