制度運営
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/13 15:47 UTC 版)
固定相場制を実現するためには、以下の二つの方法がある。 中央銀行が要求される為替をすべて受け入れる。 資金の移動を規制し、固定相場になるようにする。 2005年7月までドルに対する実質的な固定相場制を採用していた中国は2.の政策を採っていた。また、1960年代末の日本は多少の規制があったものの基本的に1の政策を採っていた。 当時の日本においては、将来的な円切り上げを見込んだドル短期資本の流入(円買い)に応えて日本銀行が円売ドル買介入をしていた。介入により固定相場制は維持できるが、市中に大量の円貨が出回る事態になる。これはティンバーゲンの定理が示すように、金融政策が為替相場の維持に用いられているため、金融政策による景気・物価の安定化が出来ない状態である。これにより金利は低下し信用創造の活発化を招くことになる。実際に、この時期列島改造ブームに乗って地価上昇を引き起こす引き金となった。 このままでは過度に景気刺激的な金融政策となるため、金利を引き上げ金融引締を行いたいと中央銀行が考えたとしよう。しかし固定相場制度の下で金利を引き上げれば、短期資本流入→円貨流出→金利低下となってしまい、金利を引き下げることは出来ない(→「固定相場制からの制約」)。これを防ぐために短期資本流入を制限すれば、金融市場は閉鎖的となり、自由な資本移動が妨げられ、国際分業による利益を得ることができなくなる。 このように、 固定相場制 独立した金融政策 自由な資本移動 の『3つの政策』は、同時に実現することができない。3つのうち、同時に2つしか実現できないのである(→「国際金融のトリレンマ」)。 そのため、日本は固定相場制を放棄した。中国も世界貿易機関(WTO)加盟後に同じ方向へ向かいつつある。(イギリスなど一部を除く)欧州連合(EU)諸国間においては、各国の『自由な金融政策』を放棄することで、固定相場制を維持している。この固定相場制とは、他ならぬ単一通貨「ユーロ」である。
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