分子疫学
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/29 06:08 UTC 版)
JCウイルスを用いたヒト集団の系譜を探る試みも行われている。 JCウイルス(JCV)はヒトの腎に寄生し、殖えた仔ウイルスは尿中に排泄される。JCVDNAは健常人の尿から容易に得られるので、分子疫学的な研究の格好の材料となる。加えて、JCVは日常的に接する大人(通常は両親)から子へ伝播すること、JCVの進化速度が適度に早いこと、株間での組み換えが起きないことなどが、JCVのヒト集団の指標としての有用性を高めている。 JCウイルスは感染するために、純粋なヒト集団の系統を反映するわけではないが、ある程度の参考になると思われる。 ➀各亜型は独特な分布域をもっている。すなわち、ヨーロッパと地中海沿岸地域には主としてEUが分布する。アフリカ全域とアジアの一部(西アジア、インド北部)にはAf2が分布し、Af1とAf3がアフリカの一部(Af1、中央アフリカと西アフリカ;Af3、中央アフリカ)に分布する。東アジアではB1-a、B1-b、B2、CY、MY、SCなどの亜型が部分的に重なり合いながら分布する。②異なるヒト集団が互いに混合したと考えられる地域では、複数の亜型が分布する。例えば北アフリカではヨーロッパ系の亜型(EU)とアフリカ系の亜型(Af2)が分布し、サウジアラビア、トルコなどの西アジアではヨーロッパ系のEUとアフリカ系のAf2、中央アジア系のB1-bが分布する。西インド洋のモーリシャスにはアフリカ系のAf2とアジア系のB1-b、B2、SCが分布する。 ③同じ亜型が遠く離れた地域で見つかることがある。例えばEUはヨーロッパと地中海沿岸地域に分布するが,韓国、日本にも僅かだが分布する。また、SCは主に中国南部と東南アジアに分布するほか、モーリシャスやザンビアなど、東南アフリカやその近辺にも僅かに分布する。➀と②で述べたJCV亜型の分布の特徴はJCV亜型とヒト集団との間に密接な関係があることを示しており、③は太古または近世において、ヒト集団の新規な移動が存在したことを示していると思われた。
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