分子生物学的視点
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/01/16 00:44 UTC 版)
なお、よりミクロな視点で見ると心臓肥大とは個々の心筋細胞の容積増加、すなわちタンパク質合成亢進と捉えることができる。動物実験において、大動脈を狭窄して心臓に圧負荷を加えると、数分後にはガン原遺伝子であるc-fos、c-myc、c-jun、また転写因子であるEgr-1などが発現するようになり数時間から数日で心房性ナトリウム利尿ペプチド(ANP)や骨格筋型アクチンなど胎児期にのみ心室筋に発現している遺伝子が再誘導される。一方、心筋小胞体で細胞内Caの調節を担っているSERCA2a(Ca2+-ATPase)の発現は低下する。これらは高度に分化した形質を犠牲にして少ないエネルギーでの収縮を可能にするような変化であり、過剰な負荷に対して心臓が適応したとも考えることができる。しかし例えばSERCA2aの発現低下は心筋拡張時の細胞質内Ca濃度の低下を不十分なものとし、肥大した心臓が拡張不全を呈する原因の一端となっている。
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