処理系の簡素化
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/04 02:05 UTC 版)
処理系の簡素化のため、以下のように安全性を犠牲にした仕様が多い。なお、ホスト環境やプログラムの内容によっては、以下に対して脆弱性対策を施したとしても実行速度の低下が無視できる程度であることも多く、言語仕様側の欠点とみなされることも少なくない。 配列参照時の自動的な添字のチェックをしない これを要因とする代表的なバグが、固定長のバッファ領域をはみだしてデータの書き込みが行われてしまう「バッファオーバーフロー」(バッファオーバーラン)である。範囲外のアクセスは、書き込みだけでなく読み取りの場合も未定義動作を引き起こす。標準ライブラリにはバッファオーバーフローや範囲外アクセスを考慮していない関数があり、かつ多用されがちなため、しばしば脆弱性の原因となる。また、Cではプログラムにより明示的に制御(動的メモリ確保)することで可変長配列の実現を可能にしているが、確保した領域の範囲外にアクセスしても自動的な伸長は行なわれない。 後継言語では、標準ライブラリまたは組み込み型により可変長配列をサポートしていたり、範囲外アクセス時には例外(実行時エラー)を送出するなどして安全性を優先していたりすることが多い。 文字列を格納するための特別な型が存在しない 文字列にはchar型の配列を利用する。言語仕様上に特別な扱いはないが、ヌル文字('\0')を終端とする文字列表現を使い、その操作をする標準ライブラリ関数がある。これは実質的にメモリ領域のポインタアクセスそのもので、固定長バッファに対して、それより長い可変長の文字列を書き込んでしまうことがあり、バッファオーバーランの元凶の1つとなっている。 後継言語では文字列処理を特に強化している場合が多く、標準ライブラリあるいは言語仕様による組み込みの文字列型を提供している。 自動変数の自動的な初期化をしない 自動変数(静的でないローカル変数)は変数の中でも最も頻繁に用いられる。初期化されていない変数を参照した場合、値は不定となるが、不定な値へのアクセスは未定義の動作(英語版)であるので、コンパイラ最適化の過程で想定しない形に改変することもある。変数宣言・初期化の仕様による制限から、変数宣言の時点で初期化せず後で代入することで初期化に代えることが日常的で、誤って不定の値の変数を読み出すバグを作り込みやすい。なお自動変数の自動とは変数の領域の確保と解放が自動であるという意味であり、自動的に初期化されるという意味ではない。 後継言語では、明示的な初期化が記述されていない変数は、不定値ではなくその変数の型の既定値(ゼロあるいはゼロ相当の値)で初期化される仕様になっていることが多い。
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