修悦体
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/07/15 13:52 UTC 版)
彼特有の「直線とアール(曲線)によって描かれた文字」を指す俗称。一定の傾向はあるものの即興性が強いため、特定の字がいつも必ず同じ形になるとは限らない。このためフォントとして一般向けに製作・販売もされていない。 レタリング作業は主にガムテープとカッターナイフを用いて行われる。ガムテープは黒が基本だが、必要に応じて赤・青など原色も用いる。「見やすい文字を心がけ、ゴシック体を参考に製作している」との本人の言葉通り、がっしりとした太い描線は遠目にもよく目立つ。 修悦体の最大の美点は、仮設の案内表示として短期的にしか用いられないにもかかわらず、直線的な字形の中にひと手間加えて曲線を多用していることにある。この曲線はいったんテープを貼った後にカッターで切り取って作られている。描線の外角部分を丸く切るだけでなく内角部分もテープをわざわざ継ぎ足したうえで曲線に処理されており、きれいに一定の幅を保って曲がっているように見せている。こうして文字に丸みを持たせたことで、利用者が不慣れな仮設空間で感じるストレスを若干でも和らげる効果を生んだものと思われる。 その他に挙げられる特徴としては、文字列全体で見た時の横線の通しやすさ(複数の文字の横線を一回のガムテープ貼りで一気に作る等)を考慮したり、「文」「刈」などの「×」形の端部をカッターの刃のように鋭角的に表現したりするケースが多い。一部の文字は「地名を知っていればこそそう読める」ほどにデザイン的に崩されている場合もある。 修悦体が注目された背景には、どんな書体も瞬時に印刷できる時代に「手作り文字」の面白みを見せたこと、そして工事の進捗に伴って日々新しい案内表示が出ては消える「ライブ感」を醸し出したことも挙げられる。 マスコミの報道によって注目されたこともあり、駅の仮設案内表示のほか、2008年の映画『まぼろしの邪馬台国』の題字や音楽CDのジャケットなど多方面で使われるようになっている。 2018年6月30日 - 9月2日、鞆の津ミュージアム開催の企画展『文体の練習』に出展。 2019年3月9日 - 5月19日、富山県美術館開催の企画展『わたしはどこにいる? 道標(サイン)をめぐるアートとデザイン』に出展。同企画展では佐藤による公開制作やワークショップも行われた。
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