信用取引とPTS
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/07 06:21 UTC 版)
「私設取引システム」の記事における「信用取引とPTS」の解説
2019年8月26日、PTSにおける信用取引が解禁となった。 前述のとおり、PTS市場における信用取引は認められていなかった。これについて、平成22年3月に公開された「パブリックコメントに対する金融庁の考え方」において、金融庁はPTS市場における信用取引を認めないのは、以下の理由によるものであると示している。 PTSを提供する業者自身が信用取引に伴う資金や株券の貸付けを行うことは、(a)市場開設者としての立場と、顧客への資金や株券の提供者としての立場との間の利益相反の問題が顕在化するおそれがあること、(b)こうした観点から、取引所においても、信用取引に伴う資金や株券の貸付けを実施していないこと等。 (取引所における信用取引と同様に)参加証券会社が資金や株券の貸付けを行うこととする場合であっても、当該貸付業務の適切性を確保するため、PTSを提供する業者に対して取引所と同等の自主規制機能の発揮を求めることは現実的でない。 このような背景を受けて、長らくPTS市場での信用取引は認められてこなかったが、平成28年12月22日に公表された、「金融審議会市場ワーキング・グループ報告 ~国民の安定的な資産形成に向けた取組みと市場・取引所を巡る制度整備について~ 」では、以下の2つの事項について適切な措置がとられていることを前提にすれば、認めるとする意見が提示されている。 PTS を提供する業者自身やそのグループ会社等が実質的な資金・株券の提供者とならないなど、利益相反の防止の観点から適切な措置が講じられていること。 信用取引について過当投機といった弊害を可能な限り排除する観点から、取引所での取引においては自主規制という観点から、信用取引残高の集計・報告、信用取引に係る規制措置、取引参加者の上記措置の遵守状況の調査・処分等の対応が行われているが、PTSの信用取引についても、これと同等の措置が講じられること。 なお、これら自主規制機能について、一義的にはPTS業者においてが対応すべきものではあるが、信用取引残高の集計・報告及び信用取引規制等の措置を実効的に行っていくためには、取引所とPTS間で必要な連携を図ることが先決である。一方で、取引参加者に対する調査・処分について目を向けた場合、PTS業者も金融商品取引業者である以上、当該業者が直接行うことは実効性が乏しく困難なため、PTS業者は取引参加者に対する調査や処分の権限を既に有している取引所や金融商品取引業者の自主規制団体である日本証券業協会などと協力して対応することが肝要であることが、同報告書では謳われている。 また、同時に、市場全体の公正性・透明性を確保して投資家保護を図る観点から、投資判断に重大な影響を及ぼすおそれのある情報が生じ、かつその内容が不明確である場合等には、適切に売買を停止する措置を講じる必要がある。仮にPTSに信用取引が認められた場合は、前述の必要性は更に高まるため、同報告書では取引所、PTS業者等の関係者において必要となる態勢の整備を行うとともに、売買停止等に至るまでの判断や連携の手順等についても確認をしなければならないとしている。 仮に、これらの事項について整備がなされ、PTSでの信用取引が解禁された場合は、現在5%程度しかないPTSのマーケットシェアが約3倍の15%以上にまで増大し、東証一極集中という現状が打破されると見込まれている。なお、2017年中にPTS市場での信用取引を解禁する方向で金融庁は調整を進めていると日本経済新聞は2016年8月26日に報じていたが解禁されず、2019年夏に昼間のみ解禁すると2018年6月30日に報道しているが、夜間禁止のためあまり利用者は増えないだろうと報じている。
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