伝承、民間伝承、伝統
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/07/16 05:28 UTC 版)
「伝承」は、英語のfolklore、フランス語のtradition populaireにあたる言葉で、庶民(柳田國男のいう常民)のあいだでみられる知識や技術の継承および後世への伝達を意味している。古くは「俚伝」とも訳され、「民俗」の語も同じ意味で用いられる。 「民間伝承」という語もよく用いられ、流布しているが、「民間」という語は、日本においては長らく官界に対するものとして用いられることが多いので、本来はfolkの訳語としては必ずしも適切ではない。 サクソン語形の複合語であるフォークロア(folk-lore )の語は、イギリスの古代学者ウィリアム・ジョン・トムス(William John Thoms)が1846年に雑誌「アシニーアム」のなかで民間古事(庶民につたわるしきたりや習わし、行事)と民間文芸(庶民に伝わる口承文学、言い伝え)などの両者をフォークロアの語のもとに包括しようと提議したことに始まるとされ、そののち欧米各国も採用するところとなったが、ドイツのみは当初からフォルクスクンデ(Volkskunde)の語を用いてきた。 また、 folklore is the tales, legends and superstitions of a particular ethnic population while folktale is a tale or story that is part of the oral tradition of a people or a place. [https://wikidiff.com/folklore/folktale#:~:text=As%20nouns%20the%20difference%20between,a%20people%20or%20a%20place.] と、あるように口頭をも含む文化"folklore"と口頭だけの"folktale"で違う扱いであるが、どちらも正しい言葉である。 フランスやイタリアではtradition populaireという語もあるが、フォークロアそのままを用いることが多い。トラディシオンtradition という語はフランスでは政治的な意味合いで受け取られることが多く、研究というよりは政治的・心情的な態度をあらわすので使用を避ける傾向がある。日本においても、民俗学におけるトラディシオンを「伝承」と訳して「伝統」とはあまり訳さないのも同じ理由によっている。「伝統」と呼称した場合、中立的な観点が阻害されることがしばしばありうるからである。 しかし今日、その一方で「民間療法」、「民間信仰」、「民間芸能」・「伝統芸能」・「民俗芸能」、「伝統行事」・「民俗行事」などの用語と混用する傾向も顕著である。
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