井原西鶴『好色五人女』巻四「恋草からげし八百屋物語」
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井原西鶴『好色五人女』はお七の事件のわずか3年後に出版され、自ら積極的に恋愛行動に移る町娘という、それまでの日本文学史上画期的な女性像を描き、お七の原典として名高い。西鶴の後続への影響は絶大なもので、特に演劇系統は西鶴を下地にした紀海音を基にするものがほとんどであり、西鶴が設定した恋人の名を吉三郎、避難先の寺を吉祥寺とすることを受け継いでいる作品が大多数を占めることからも西鶴の影響の大きさが推測される。 (あらすじ)師走28日の江戸の火事で本郷の八百屋八兵衛の一家は焼けだされ、駒込吉祥寺に避難する。避難生活の中で寺小姓小野川吉三郎の指に刺さったとげを抜いてやったことが縁で、お七と吉三郎はお互いを意識するが、時節を得ずに時間がたっていく。正月15日、寺の僧達が葬いに出かけて寺の人数が少なくなる。折りしも雷がなり、女たちは恐れるが、寺の人数が少なくなった今夜が吉三郎の部屋に忍び込む機会だと思ったお七は他人に構われたくないゆえに強がりを言い他の女たちに憎まれる。その夜、お七は吉三郎の部屋をこっそり訪れる。訳知りの下女に吉三郎の部屋を教えてもらい、吉三郎の部屋にいた小坊主を物をくれてやるからとなだめすかして、やっとお七は吉三郎と2人きりになる。ふたりは『吉三郎せつなく「わたくしは十六になります」といえば、お七「わたくしも十六になります」といえば、吉三郎かさねて「長老様が怖や」という。「おれも長老様は怖し」という。』という西鶴が「なんとも此恋はじめもどかし」というように十六歳の恋らしい初々しい契りだった。翌朝吉三郎といるところを母に見つかり引き立てられる。八百屋の新宅が完成しお七一家は本郷に帰る。ふたりは会えなくなるが、ある雪の日、吉三郎は松露・土筆売りに変装して八百屋を訪ね、雪の為帰れなくなったと土間に泊まる。折りしも親戚の子の誕生の知らせで両親が出かける。両親が出かけた後でお七は土間で寝ている松露・土筆売りが実は吉三郎だと気が付いて部屋に上げ、存分に語ろうとするが、そこに親が帰宅。吉三郎を自分の部屋に隠し、隣室に寝る両親に気がつかれないようにお七の部屋でふたりは筆談で恋を語る。こののちになかなか会えぬ吉三郎の事を思いつめたお七は、家が火事になればまた吉三郎がいる寺にいけると思い火付けをするが、近所の人がすぐに気が付き、ぼやで消し止められる。その場にいたお七は問い詰められて自白し捕縛され、市中引き回しの上火あぶりになる。吉三郎はこのとき病の床にありお七の出来事を知らない。お七の死後100日に吉三郎は起きられるようになり、真新しい卒塔婆にお七の名を見つけて悲しみ自害しようとするが、お七の両親や人々に説得されて吉三郎は出家し、お七の霊を供養する。
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