事業再生ADRの特徴
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 00:48 UTC 版)
「裁判外紛争解決手続」の記事における「事業再生ADRの特徴」の解説
事業再生ADRには以下のような特徴がある: 債権放棄をする場合、純粋私的整理では個別の案件それぞれにおいて税務当局に損金になるかについて判断を受ける必要があるが、当制度を利用して債権放棄をする場合は税務当局から合理的に債権放棄がなされたものとして扱われ、税務上の損金算入が認められる。これにより債権者は不良債権を税制上の不安なく処理できる。 また手続は金融債権者に限って行われるため、取引債権者に影響はなく、本業を継続しながら、解決策を金融機関との話し合いで模索することもできる。つなぎ融資なども受けやすい。 法的整理とは異なり、事業価値の毀損も少ない。 法的整理も担う実績のある実務家が手続を管理するため、手続の品質が高い。 もし意見がまとまらない場合は裁判所を利用した法的整理(会社更生、民事再生、破産など)を利用してADRの結果を尊重して手続を進めることも可能である。 2018年7月の産業競争力強化法の改正で、事業再生ADRから法的な整理(会社更生法、民事再生法、破産法など)に移行した場合の商取引債権の保護に関する規定が明記され、利便性が増した。 債権者会議は3回まで行われ、3回目の債権者会議が不調に終わった場合は、事業再生ADRは不成立になる。 上場企業の場合、法的整理とは異なり上場廃止とはならない。東京証券取引所上場企業でかつ債務超過となった企業に関しては、2020年11月1日に改正された有価証券上場規程で、事業再生ADRにおいて債務超過でなくなることを計画している場合は、上場廃止の対象外となる。事業再生ADRが成立し、かつ債務総額の100分の10以上相当する額以上である債務について債務免除を実施することが合意された場合は、証券取引所に「事業再生計画」を提出しなければならない。証券取引所は「事業再生計画」提出後に1ヶ月間における時価総額の審査を行い、これにより上場維持か上場廃止が判断され、時価総額が所要額未満であったり株式の併合が行われたりする場合は、法的な整理に準ずるものとして上場廃止となる。2020年10月期までに債務超過により「上場廃止に係る猶予期間入り」に指定された上場企業は、債務超過を解消する再生計画案が成立した場合に限り、猶予期間が1年延長されるが、3期連続で債務超過に陥った場合は上場廃止となる。
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