一分岐貸し問題
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/04/04 18:30 UTC 版)
加入者線共有型のFTTHにおいて、NTT東・西が他事業者に一芯単位で貸し出している光ケーブルを、一分岐ごとに貸し出すことの是非をめぐる問題である。総務省情報通信行政・郵政行政審議会 電気通信事業部会 接続委員会で審議されている。 光回線を持たないADSLを提供している事業者が光回線を借りる場合、空き分岐が発生するリスクがなくなり、格安にFTTHを提供することができる。しかし、光回線を貸し出すNTTにとっては、新技術の導入による回線速度の向上や帯域制御が困難になり、光回線の新設投資の回収の年月の延長につながり、普及の妨げになる。一分岐貸しの場合、NTTのみが損失を負担するため、空き分岐の解消への借りる事業者の意欲が低下し、設備利用率の低下につながるとの指摘がある。また、設備投資リスクを回避した格安業者の出現は、自社で光回線を設置しているNTT以外の事業者の設備投資の回収可能性を低下させる。ほとんどがNTTの固定電話を使用していた既設メタル回線によるADSLから、プロバイダがIP電話を提供するFTTHへの切り替えが、携帯電話により通話時間が減っている中でNTTの収益悪化を加速させていることもある。 FTTHにおけるNTTによる寡占化(NTT西日本、東日本を合計した全国シェアは約69.7%(2015年9月末現在))が問題視されているものの、NTT西日本営業地域では、NTT西日本のシェアが50%を下回っている地域もあり、局地的には電力系通信事業者・CATV業者などと熾烈な競争が展開されている。一方でNTTは、物理的なケーブルではないものの、フレッツを介して広くVNOであるプロバイダ各社にネットワークを提供しており、物理回線を提供する業者として一定の義務を果たしているともいえる。 2011年11月18日、総務省による調停が、望まない形で結審したことから、ソフトバンク系列は、NTT東西に対して訴訟を起こしたものの敗訴している。ソフトバンク系列は、コストがかかるにもかかわらず自社のFTTHユーザが増えないため、フレッツを利用したFTTHを提供していた。2015年2月から、NTTの光回線サービスの卸売でソフトバンクモバイルブロードバンドと組み合わせたインターネット接続事業を開始している。ADSLの場合よりも利益率が低いのみならず、想定している一分岐貸しの場合に見込まれる粗利率よりも低くなると予想されている。 一芯単位であることには利点もある。KDDIは、一芯単位であることの利点を利用して、1Gbps専有型での通信サービスを提供している。
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