リチウム電池
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出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2025/04/15 15:03 UTC 版)
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リチウム電池(リチウムでんち)は、負極に金属リチウムを使った化学電池である。
概要
リチウムイオン電池、リチウムイオンポリマー電池は、負極にリチウムイオンを吸蔵する炭素等を使った二次電池であるため、リチウム電池とは区別される。もっとも普及しているコイン型リチウム(CR系)一次電池は正極に二酸化マンガン、負極にリチウムを使用している。リチウム二次電池としては正極にマンガン複合酸化物、負極にリチウム・アルミニウム合金を使用するマンガンリチウム二次電池(ML系)が普及している。
近年は電気自動車の需要急増や燃料価格の上昇の結果、気候変動に敏感な消費者による購入が増えており[1]、2023年2月15日にの官民連携による組織リブリッジが公表したデータによると世界的な需要は2030年までに5倍以上に急増する見通しである[1]。
ここではリチウム一次電池について記す。
種類
リチウム電池は、正極の素材により次のような種類に分類できる。表中の「記号」とは、IEC 60086で定められた規格名称(CR2032など)の1文字目である。
記号 | 電池系 | 正極 | 電解液 | 負極 | 公称電圧 |
---|---|---|---|---|---|
B | フッ化黒鉛リチウム電池 | フッ化黒鉛 | 非水系有機電解液 | リチウム | 3.0 |
C | 二酸化マンガンリチウム電池 | 二酸化マンガン | 非水系有機電解液 | リチウム | 3.0 |
E | 塩化チオニルリチウム電池 | 塩化チオニル | 非水系有機電解液 | リチウム | 3.6 |
F | 硫化鉄リチウム電池 | 硫化鉄 | 非水系有機電解液 | リチウム | 1.5 |
G | 酸化銅リチウム電池 | 酸化銅(II) | 非水系有機電解液 | リチウム | 1.5 |
最も広く使われているものは二酸化マンガンリチウム電池である。公称電圧は3ボルトと、円筒型乾電池(マンガン乾電池やアルカリ乾電池)のちょうど倍である。硫化鉄リチウム電池は公称電圧が円筒型乾電池と同じであるため、リチウム乾電池として単3形と単4形が製造されている。
原理

二酸化マンガンリチウム電池は、正極に二酸化マンガン、負極に金属リチウム、電解液には、有機溶媒にリチウム塩を溶解させたものを用いている。化学反応式は次の通り
-
正極 :
Keep-out-of-reach-of-children スマホなどのIoTデバイスに内蔵されているリチウム電池は、ハッキングして出力を無限大にすることによって爆破することができる[4]。2024年に、イランの支援を受けた過激派グループがシーア派武装組織に対して、コンピュータ・ウイルスを使用して通信機器を爆破し、十数人が死亡、2,700人以上が負傷をしたとニューヨークタイムズが報じた[5] 。
JIS規格の規定内容と図記号について
ピクトグラム刻印 JIS 規格では,電池の取扱いの安全性に関する注意事項及びそれを表示することが規定されている。例えば「JIS C8513(リチウム一次電池の安全性)」では、「7.2 電池取扱いの安全性に関する注意事項」として、「電池は、乳幼児の手の届かないところに置く。」と記載されており、乳幼児が飲み込む可能性がある小さな電池は乳幼児の手の届かないところに置くこと、電池を飲み込んだ場合には直ちに医師に連絡し、指示を受けることが、記載されている。さらに、大人が監視していないところで、子供に電池の交換をさせないことも記載されている。この安全図記号は“電池は,乳幼児の手の届かないところに置く”という注意喚起を保護者に行うことを目的としている。[6]直径20mm以上のコイン形リチウム一次電池は、電池本体への安全図記号の表示が要求事項となっている。
再資源化 (リサイクル)
リチウム一次電池は貴重な金属でできているため、一部の自治体では、アルカリ乾電池やマンガン乾電池とともに、リチウム一次電池も再資源化のために回収している。回収の有無や回収方法は、各自治体のWebサイトや各戸に配布されるゴミ処理方法の案内やゴミ回収カレンダー等に記載されている。一例としては、役所や公共施設等に回収箱を置いて、持ち込みで回収していたりする。
リチウム二次電池
リチウム電池の二次電池化は1980年代から進められてきたが、安全性やリチウムイオンが正極中に拡散し分極が生じたり、正極に毛細状の亀裂が生じ、電解液がしみ込み大量の熱を発生したりするため実用化には至ってない。リチウムイオン二次電池が実用化されたことにより、開発は下火になった。理論上の容量は現在のリチウムイオン二次電池の4倍にできると期待される[7]。近年、炭素原子がハニカム構造をとる20ナノメートルのドーム型の保護膜で分極を防ぎ、充電時のリチウムの膨張にも耐えるようにできるように改良された事で実用化に向けて前進した[7]。
脚注
- ^ a b 「世界のリチウム電池需要、2030年までに5倍に=米報告書」『Reuters』2023年2月16日。2023年2月16日閲覧。
- ^ a b 藤枝卓也、次世代リチウム電池用金属負極材料 まてりあ 1999年 38巻 6号 p.488-492, doi:10.2320/materia.38.488
- ^ LEDを点灯させるには2V前後(赤色・黄色などの場合)の電圧が必要であるため、1個のセルで3Vが得られるリチウム電池は好都合。
- ^ “Are phones and cars next? Hacker explains: The Cybersecurity threat you need to worry about?(YouTube)”. 2025年4月15日閲覧。
- ^ “How Israel Built a Modern-Day Trojan Horse: Exploding Pagers(The New York Times)”. 2025年4月15日閲覧。
- ^ Blackplate (2021-01-18), English: Simple 'keep out of reach of children' pictogram. 2021年10月27日閲覧。
- ^ a b “スマホや電気自動車のバッテリー容量を4倍にする「真のリチウムバッテリー」が登場”. 2018年11月23日閲覧。
関連項目
- 塩化チオニルリチウム電池(ER)
- 酸化銅リチウム電池(GR)
- フッ化黒鉛リチウム電池(BR)
- コイン型リチウム電池
- チタン酸リチウム二次電池
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