メレアグロスの『花冠』
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「ガダラのメレアグロス」の記事における「メレアグロスの『花冠』」の解説
メレアグロスは、『花冠』(古代ギリシア語: Στέφανος、ステパノス)と題した詩のアンソロジー本で有名である。アテネのポレモン(英語版)(別名イリウムのポレモン)やその他の人物が、特定の主題について、記念碑的な碑銘文や、詩作品の集成を早くから作ってはいたが、メレアグロスは包括的な作品集成を初めて作り出した。彼は、先行する2世紀前の各抒情詩人の時代から彼自身の時代に至るまで、46人のギリシア詩人によるエピグラム詩を集成した。彼の集成の題名は、小さな美しい詩作品を、花々や植物に比喩する、一般的な比較を念頭して付けられている。詞華集は、詩作品のあいだで作者と主題を交互に結びつけた芸術的な配置を持っていた。アンソロジーの「序文」において、メレアグロスは様々な花や灌木や香草の名称を、いわば紋章としてすべての詩人の名前に結びつけている。それは、例えば次のようになっていた。『花冠』序文の冒頭部分: いとも親愛なるムーサ女神よ、御身は誰へと、この詩歌の果実を齎さんとするか。はた、このうたの花冠を編み上げしは誰か? そはメレアグロス。栄えあるディオクレースの記念にとて、丹精込めてここに編み上げぬ。数多のアニュテーの百合を編み込み、それに劣らぬモイローの花を。サッポーの花は多くなけども、そは薔薇の花英。またナルキッソス(水仙)を。そはメラニッピデースの詩の明澄には余りに重けれど。はたシモーニデースの薔薇の若枝を。こうしてメレアグロスこと、ノッシスの甘く香る愛らしいあやめの花を編み込み、愛神エロースの蝋板の蝋がその愛にて溶けぬ。香り優れしリアノスの詩はマヨラマとなり、エーリンナの乙女の肌持つ、甘きクロッカスを。朗唱の詩人の花、アルカイオスのヒヤシンス(風信子)を、かくてサモスの月桂樹の深緑の葉が飾る小枝をば…… — メレアグロス『花冠』序文(『ギリシア詞華集』IV巻1章所収) メレアグロスの『花冠』を元として、時代と共に様々な詩集やアンソロジーが加わって行き、やがて『ギリシア詞華集』(Anthologia Graeca)と呼ばれる、浩瀚な古代ギリシアの詞華集が誕生した。元になったメレアグロスの『花冠』は、それ自体としては輪郭が不明となったが、『詞華集』を構成するオリジナルのルーツとして継承され生き残った。
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