マーシャル派との論争
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/11/06 00:27 UTC 版)
「ライオネル・ロビンズ」の記事における「マーシャル派との論争」の解説
『経済学の本質と意義』は経済学の方法論に関して今日まで影響力の強い著作であるが、同時にこの著作は副産物としてマーシャル派の経済学者との間の新たな論争を巻き起こした。それが効用と厚生経済学を巡る論争である。 『経済学の本質と意義』のなかでロビンズは効用の個人間比較を科学的な根拠がないとして批判しているが、これはアーサー・セシル・ピグーの厚生経済学のフレームワークを批判するものでもあった。ピグーの厚生経済学は個人の福祉の観点から経済システムや政策を評価するという画期的な目的を持ったものであったが、ピグーは効用を福祉の指標として専ら用いた。ロビンズが問題としたのはピグーの効用に関する考え方であった。ピグーはジェレミー・ベンサム以来の功利主義の伝統に従い基数的効用を想定した。すなわちピグーのフレームワークにおいては効用は実体のある概念であり、単位を用いて計測できるものであった。従って効用を個人間で比較したり、足し合わせることが可能となる。ピグーの厚生経済学では計測された効用を個人について足し合わせ、その効用の総和の大小を社会の状態、経済システムの評価に用いることが想定されていたのである。 これに対してロビンズは効用の個人間での比較を科学としては否定したため、ロビンズの枠組みでは基数的効用を用いることが出来ないこととなる。後に両者の論争はロビンズの「勝利」に終わるが、ロビンズの示唆に従って厚生経済学の再構成を行い「新厚生経済学」を確立したジョン・ヒックス、ニコラス・カルドア、さらにはポール・サミュエルソンといった経済学者たちは順序にのみ焦点を当てる序数的効用を新しいフレームワークの基礎に用いた。
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