ボデゴン様式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/08/22 03:48 UTC 版)
ルイス・メレンデスは17世紀の巨匠サンチェス・コターンやフランシスコ・デ・スルバランらによって始められた禁欲的なスペイン静物画の伝統をリニューアルし豊かにした。過去の巨匠のようにメレンデスも野菜や果物、陶器やグラス、銅製ポットの質感、色そして光の効果を研究した。ただし17世紀の巨匠と違うのはメレンデスの場合対象物が物理的に近くに配置され、低く置かれた視点により鑑賞者に自分で対象を詳しく見るよう促している点である。この試みは高まりつつあった啓蒙精神や王の自然史への興味と軌を一にしていた。 メレンデスは静物を畏敬の念を持って描いた。彼を惹き付けたのは歴史や宗教の主題ではなく日常のありふれた物だった。彼は日常目にする何の変哲も無い物の形を並々ならぬ興味を持って観察した。メレンデスの一つ一つの作品は我々の視線を釘付けにし、圧倒する。そこには優れた構成の技術がある。洗練された巧妙な物体の構成は存在感とリアルな質感を伝えている。低い視点とクローズアップを用いたことにより机の上の対象物は比類なきモニュメンタリティを与えられている。量感を引き出す為の強めの光は描写の冴えを一層引き立たせている。 メレンデスは絵具の準備よりもライティングに時間を掛けたようだ。彼はレモン、銅製のポット、陶器のボウル、プラム、メロンなどの物の表面、縁、角がお互いを写す様子を描くことを好んだ。これは作品にリズムと生気与えている。ルイスは自分の作品を評してスペインの気候が産み出す食品を集めた興味深いキャビネットだと述べている。 プラド美術館以外に所蔵されている彼の作品に『オレンジとウォルナッツと砂糖菓子の箱ある静物』(試訳)(ナショナル・ギャラリー、ロンドン)、『皿に盛られたプラムと洋ナシ、果物籠のある静物』(試訳)(マサヴェウ・コレクション、アストリアス美術館、アストリアス)、『鯛とオレンジのある静物』(試訳)(個人蔵)などがある。
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