ペンシルバニア鉄道のパルスコード式車内信号システム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2017/11/08 14:46 UTC 版)
「車内信号」の記事における「ペンシルバニア鉄道のパルスコード式車内信号システム」の解説
1920年代にペンシルバニア鉄道によって導入された車内信号システムが最初の広く使用された車内信号装置であり、北アメリカにおいて今でも広く用いられている。この方式は、レールに流される電気信号に基づいて機関車の運転台に連続的に信号現示を表示するようになっている。技術はペンシルバニア鉄道と関係の深い、ユニオン・スイッチ・アンド・シグナルによって開発された。 最初の試験導入はサンバリー(Sunbury)とルイスタウン(Lewistown)の間で行われ、線路に3つの現示(制限、接近、進行)に対応した誘導ループ線を設置して、60Hzの商用周波数の信号を流すようにした。試験導入では路側の閉塞信号機を外して車内信号だけに頼って運転するということも行われた。ペンシルバニア鉄道ではもう1つのループ式システムをノーザン・セントラル線のボルチモア(Baltimore)とハリスバーグ(Harrisburg)の間に1926年に導入し、こちらでは100Hzの信号電流を使った。 1927年にペンシルバニア鉄道は、誘導ループの代わりにパルスコードを使った新しい車内信号の試験を開始した。100Hzの信号電流のパルスがレール面から数インチの高さで先輪の前にあるセンサーで電磁誘導により検出されるようになっていた。コードは180ppmでCLEAR、120ppmでAPPROACH MEDIUM、75ppmでAPPROACH、0でRESTRICTINGを表す。パルスの周波数は、信号の反射で生じる高調波成分が誤現示を引き起こさないように、どの現示でも他の現示の周波数の倍数にならないように選択されている。このシステムは、信号電流が絶たれるとRESTRICTINGとなるので、フェイルセーフ性がある。コードは閉塞区間の先端から列車に向かって送信されるようになっており、これによりレールが破損したり他の列車が閉塞区間に進入したりすると、コードが途絶えて車内信号がRESTRICTINGになるようになっている。 当初は、車内信号装置はATSのように動作して、信号現示が変化すると運転士がそれに対応して自動ブレーキが動作する前にブレーキを掛けることができるようになっていた。後に旅客用の機関車ではATCのように常に速度制限を強制するように改修された(APPROACH MEDIUM 45mph、APPROACH 30mph、RESTRICTING 20mph)。 時間をかけてペンシルバニア鉄道は車内信号システムを東部の鉄道路線に、ピッツバーグからフィラデルフィアまで、ニューヨークからワシントンまで導入した。電化が行われるに至り、レールに流れる帰線電流の25Hzの高調波成分を避けるためにコードの周波数は91と3分の2Hzに変更しなければならなかった。 このシステムは後にコンレール(Conrail)やアムトラックなど、ペンシルバニア鉄道の走っていた地域で通勤路線を運行している多くの鉄道会社に引き継がれた。車内信号システム区間を走る列車は全て装置を備えていなければならないため、これらの鉄道会社の機関車はほとんどが車内信号装置を備えている。インターオペラビリティの問題から、ペンシルバニア鉄道式の4現示車内信号システムはデファクトスタンダードとなっており、新たに導入される車内信号システムのほとんど全てがこのシステムを使うか、その互換のものとなっている。
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