ベル三位神
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/06/14 14:02 UTC 版)
ベル(ベール)はメソポタミアの都市バビロンの主神マルドゥクに由来し、ハンムラビ(在位紀元前1792-前1750年)がバビロニアを統一したことにより、マルドゥクは国家神として「ベル(ベール)」(アッカド語で「主」の意)という最高神となり、後に紀元前後まで「ベル=マルドゥク」(「〈神々の〉主マルドゥク」の意)と呼ばれた。パルミラにおいては、紀元前3世紀後半にはすでに外来の一地方神としてベールの崇拝があったとされるが、最高神になる過程において、パルミラ土着の地方神「ボール」(BWL, Bôl) がベールに変化・昇格したともいわれる。 さらに三位神の形式が取り入れられ、最高神ベル(ベール)とともに、それぞれ「ボール」から派生した太陽神ないし混合神で「泉の支配者」のヤルヒボール(英語版)、月神で「復活の精」のアグリボール(英語版)を合祀し、ヤルヒボールを向かって左、アグリボールを右に配置した。碑文では、ベル、ヤルヒボール、アグリボールの順に刻まれる。ギリシア語碑文において、ベルはギリシア神話の最高神で天空神のゼウス(ローマ神話のユーピテルに相当)としてディオス(ゼウス)=ベーロスの名が見られ、ヤルヒボールには太陽神(ヘーリオス)にあたるヘーリオドーロスが認められる。成立の年代は明確でないが、碑文により紀元前33年、ドゥラ・エウロポスにベルとヤルヒボールの2神に奉献した神殿が認められ、その後、ベル神殿が建立された紀元32年の碑文が三位神の初見となることから、その間に形成されたことが示唆される。また、ベル三位神に加えてアラビアの神アルス(英語版)や女神アラート(Allat、アッラート、Al-Lat)ないし女神アスタルト(アスタルテ)を加えた意匠のほか、外来の太陽神シャマシュの組み合わせ、さらにベルの祭祀においてディオニューソスの関連も認められる。 ナボー神殿(フランス語版)で知られるメソポタミアの神ナボー(Nabo、ナブー〈ナブ、Nabu〉)は、バビロニアの主神マルドゥク(ベル=マルドゥク)の息子で「神々の書紀」とされる神であり、ギリシア神話のアポローンに相当するが、パルミラでは「ベル(ベール)の息子」として時にベルと並び記される。
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