ヘドリー・ブルの「新しい中世」論
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「新しい中世」の記事における「ヘドリー・ブルの「新しい中世」論」の解説
1977年の著書で、ブルは、世界政治における秩序を考察対象に据えて、近代ヨーロッパに成立した主権国家を構成要素とする「国際社会」の拡大のプロセスとその現代的特質を検討した。そして世界大に広がった「国際社会」を超越する代替物として、世界政府などいくつかのモデルを提示した。そのひとつが「権威が重なり合い、かつ多元的な忠誠のシステム」、すなわち「新しい中世」である。 ブルは、それまで主権国家に集中していた権威/権力が分散し、重層的な関係を切り結ぶ社会空間が誕生したと判断する指標として以下の5つを挙げている。 諸国家の統合:ヨーロッパ共同体の形成に端的に見られる地域統合が主権国家の存立基盤を覆す可能性。 諸国家の分離:一国内における自治分離運動が主権国家の枠組みを変える可能性。 私的な国際暴力の復活:暴力の独占的管理という主権国家の存在論的基盤に対する挑戦。 脱国家的組織の生成:国境を越えたさまざまな社会運動や世界銀行などの国際機関の行動による主権国家システムの浸食。 技術発展による世界の一体化:「宇宙船地球号」や「地球村」といった主権国家の上位に措定される帰属意識の醸成。 しかし、以上の5つの指標を検討した結果、ブルが導き出した結論は、1977年の時点で、「新しい中世」が「主権国家システムに比べ、それほど秩序だっていないことの確証ではなく、むしろ、いっそう秩序だっていることの確証をまったく持てない」というように、否定的なものであった。
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