プロダクトバイプロセスクレーム(ぷろだくとばいぷろせすくれーむ)
”プロダクトバイプロセスクレーム(product by process claim)”とは、物の製造方法によってその物を特定するクレームのことをいう。
化学物質やバイオ技術により得られる物質については、その物質を具体的な構造などで表現できない場合もある。そのような物質をクレームする場合には、その物質(プロダクト)を、その物質がどのようにして得られるのかという製造方法(プロセス)によって特定することが認められている。
プロダクトバイプロセスクレームの例としては以下のようなものがある。
例:「製造方法A(工程a、b、c)により生産される抗生物質X」
上記クレーム例の表現ぶりからもわかるように、製造方法で物質が特定されてあっても、クレーム対象はあくまでも物自体(抗生物質X)であり、審査段階では、プロダクトバイプロセスクレームが対象とする発明は、最終的に得られる物自体であると認定することとされている。
したがって、プロダクトバイプロセスクレームの新規性の判断の際には、その物が公知であれば新規性が否定される(特許庁審査基準)。例えば、上記クレーム例の場合、クレームの製造方法Aとは異なる製造方法Bにより生産される「抗生物質X」が公知であれば、たとえクレームの製造方法Aが新規であっても新規性が否定されることになる。
なお、当該物をその構造又は特性によって直接特定することができるにもかかわらず、方法的な記載が請求項に含まれている場合には、不明確であるとして拒絶されることになる。
一方、権利化後のプロダクトバイプロセスクレームの技術的範囲の解釈は、審査段階とは事情が異なり、主に2通りの見解がある。具体的には、(1)クレームの物と同一であれば、製造方法の相違にかかわらず技術的範囲に含まれるという解釈と、(2)クレームに記載された方法と同一の方法によって製造されている物のみが技術的範囲に含まれるという解釈である。ケースバイケースではあるが、わが国の裁判例では(1)の解釈を採用する場合が多いようである。
(執筆:弁理士 古谷栄男)
プロダクト・バイ・プロセス・クレーム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/16 23:15 UTC 版)
「特許請求の範囲」の記事における「プロダクト・バイ・プロセス・クレーム」の解説
プロダクト・バイ・プロセス・クレーム(product-by-process claim)は、物の発明をその製造方法によって特定しようとする請求項である。例えば、化学の分野において、今まで知られていなかった有用な薬剤を発明したが、その薬剤の成分や化学構造を決定できず、その薬剤を製造方法によって特定するほかない場合に用いられる。プロダクト・バイ・プロセス・クレームは、方法クレームではなく、物クレームである。 範囲の解釈に、同じ物ならば製法に違いがあっても含める「物同一説」と、同じ製法の物だけに限定する「製法限定説」があり、日本では従来確定していなかった。2015年6月5日の最高裁判所判決(平成24年(受)1204号、同2658号)により、「物として特定することが不可能または非実際的である事情があると判断できるとき」(上の例など)を例外(解釈は物同一説による)として、発明が明確でないとの拒絶・無効理由があるとされ、特許庁ではこれを考慮した審査を実施している。
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