ブラックタイプ方式
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/15 17:11 UTC 版)
「競馬の競走格付け」の記事における「ブラックタイプ方式」の解説
グループ制・グレード制の導入の発端は競走馬の円滑な流通を促進することであったが、こうして作られた制度は競走馬を売買する際に、血統や競走成績を記した書面を作成する際に使用される。 国際セリ名簿基準委員会(International Cataloguing Standard Committee:ICSC)が定めるせり名簿の作成基準では、グレード・グループの明記し、その優勝馬を太ゴシック(JRAの説明では太ゴチック文字)、2着馬と3着馬がゴシック文字(同、ゴチック文字)で記載することができる。これにより、血統書や競走成績書を一目見ただけで、その馬がどのぐらいの優秀さをもっているのかがすぐわかる。この方式をブラックタイプ、またはブラックタイプ方式と言う。 こうした方法が考えだされたのは1952年で、アメリカのサラブレッド競り会社のファシグ・ティプトンが競り名簿でステークス競走勝馬を太字で表記したのが始まりである。1960年にはこの方法がケンタッキー州のキーンランドでも採用された。こうした方法がアメリカとヨーロッパで広まり、1983年に両者によって国際セリ名簿基準委員会が組織された。 ブラックタイプ方式が無い時代では、たとえば競走成績書に「アーカンソーダービー1着」と書いてあっても、その競走がどれぐらいのレベルの競走であるかを知るのは大変である。しかしグレード制・グループ制に基づくブラックタイプ方式では、馬名が太ゴシック体で書かれ、G1と書いてあれば、どこの国の人間でもその競走の価値が一目でわかる。理論上は、G3と書いてあれば、それがブラジルであれニューヨークであれニュージーランドであれ、同じ価値を有するものとされている。これが「本当に」実態に合っているかは議論の余地がある。アメリカのジャーナリスト、ジョスリン・ド・モープレイは、この方式は正しい情報を持たない遠隔地の人間に誤った判断をさせる手助けをしていると指摘する。たとえばヨーロッパの調教師は、アメリカ人にはロンシャン競馬場のG2とイタリアのG2の区別がつかないから、より容易に勝てるイタリアへ競走馬を送り込んだり、凱旋門賞も田舎のG1も同じ「G1」であるから、強い馬との対戦を避けてイタリアやドイツに遠征すると指摘している。 この方式に従うと、かつての日本国内でどれだけ多くの重賞に勝ち、三冠競走や天皇賞や有馬記念に勝とうとも、アメリカの片田舎のG3戦で2着になった競走馬のほうが「格上」ということになる。とはいえ、各国の競馬の実情を詳しく知ることで、こうした名目上の格付けに頼らずに競走馬の優劣を判断しようとする者もいた。
※この「ブラックタイプ方式」の解説は、「競馬の競走格付け」の解説の一部です。
「ブラックタイプ方式」を含む「競馬の競走格付け」の記事については、「競馬の競走格付け」の概要を参照ください。
- ブラックタイプ方式のページへのリンク