フッドの轟沈
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/10/18 16:59 UTC 版)
0600に、ホランドは部隊にもう一度左に回頭するよう命じ、フッドとプリンス・オブ・ウェールズの主砲をすべて敵に向けられるようにした。この回頭の途中、プリンス・オブ・ウェールズ艦上からは、およそ 14 km の距離からのビスマルクの一斉射撃の砲弾が、フッドの主檣周辺に着弾するのが見えた。そしてその38cm砲弾の一つがフッドの主檣とその後方にあるX砲塔の間のどこかを直撃した。 直後に、主檣付近から、巨大なトーチランプの火のように巨大な火柱が噴きあがった。そしてそれに続く爆発が中央部からY砲塔に至る船体の大部分を破壊した。船体は2つに分断され、まず後部が沈んだ。艦首部も上を向き、回転しながらまもなくあとに続いた。艦首部が沈む直前に、前部砲塔が、おそらく死を宣告された砲員によって、最後の斉射を行った。 この最後の斉射の少なくとも1弾がビスマルクの燃料タンクを貫通し、大きな穴を開けることによってビスマルクの燃料流失を早め、結局連合国部隊の追撃を振り切ってフランスに逃げ込むことを阻んだという主張がなされてきた。しかし、この命中弾はプリンス・オブ・ウェールズの14インチ(35.6 cm)砲弾(上述の3斉射の1つ)であると考えるのが通常である。 破片は半マイル後方のプリンス・オブ・ウェールズにも雨のように降り注いだ。フッドはおよそ8分で沈没した。ホランド中将を含む1,415人が運命をともにした。乗組員のうち生き残ったのは、2時間後に駆逐艦エレクトラによって救助されたテッド・ブリッグス、ボブ・ティルバーン、ビル・ダンダスのわずか3人だった。 当時のイギリス海軍本部は、フッド喪失の原因を検討し、ビスマルクの38cm砲弾の1つが火薬庫に侵入し、破滅的な爆発を起こした可能性が最も高いと結論した。 2001年に見つかったフッドの残骸を潜水艇で調査した結果によれば、主檣付近の4インチ(10 cm)砲の弾薬の爆発が、目撃された垂直の火柱の原因であり、それに引火した後部15インチ(38.1 cm)砲の弾薬の爆発が艦尾を破壊したものと考えられている。この爆発が燃料を燃やしつつ右舷燃料タンクを経由して前部に伝わり、前部の弾薬を爆発させ、艦を完全に破壊した可能性がある。 フッドの残骸は、艦首部は一切の構造を失って曝されており、1番砲塔から前部甲板に至る大きな区画が失われている。船体中央部の外板は外側に反り返っている。さらに、600トンの司令塔を含む前部構造物の主要部分は、船体の残骸から1マイル(1.6 km)以上離れて見つかった。これは後部の弾薬の爆発の火炎と圧力が前部に及び、前部の15(38.1 cm)インチ砲の弾薬をも爆発させたという見解を裏付けるものである。
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