フォルーグの試み
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/12/28 10:04 UTC 版)
「フォルーグ・ファッロフザード」の記事における「フォルーグの試み」の解説
フォルーグは初期の三作(『囚われ人』、『壁』、『反逆』)において、好んでマスナヴィー形式で試作し、形式や韻律の点でも古典作品を継承していた。しかし、『新たなる生』以降、ペルシア古典詩の伝統でもあった形式や形態によって詩の内容に限界や制限が加えられることに反対し、自ら進んで形式よりも内容を重視して作詩を行なった。「形式から内容へ」という従来の詩のあり方を否定し、「内容から形式へ」を基本理念とした。そのような彼女の詩には次の四つの特徴がみられる。 ①まず第一に、詩的言語と音楽性の点では、詩的言語を古典詩の韻文調から脱却させて散文の言語に近づけ、自然な会話のリズムを用いたことである。この点に関しては、「現代詩の祖」であるニーマー・ユーシジの主張をフォルーグが意識的に継承したのであった。 詩のリズムや言語を口語体に近づけることは、特に『新たなる生』の前半までのフォルーグの詩には必要なことであった。詩集『新たなる生』の前半の詩は、初期の三冊の詩集と同様に、一人称で率直に自分の経験や感情を語っているため、韻文調の言語では語り手の現実性が損なわれてしまうのである。 しかしながら、フォルーグは決して韻律やリズムを破棄したのではなかった。韻律やリズムが不可欠の存在であると認識した上で、詩の内容や言葉に合わせた独自の韻律やリズムを創造したのであった。 ②「アカシア」などといったいくつかの単語に、フォルーグの詩的イメージを与えたことである。また、古典詩では決して用いられないような単語を詩の中に取り入れたことも大きな特徴である。日常的な単語ではあっても「詩的」とは言えない単語がフォルーグの詩にしばしば登場する。伝統的に「詩的であるか否か」という観点から作詞における自由が奪われることに、フォルーグは反対した。 ③異なるカテゴリーにある単語を組み合わせたことである。本来なら結びつくような関係にはない単語同時を組み合わせ、新しいイメージを読者に喚起させた。機械的に単語を組み合わせるだけれ容易に新鮮なイメージを作り出せたため、フォルーグの世代あるいはそれ以降の世代の詩人たちもこの手法を多用したが、単語の組み合わせのみに固執し詩の意味や内容に深みがない作品になることが多かった。 ④繰り返しを多用したことである。フォルーグは一つのベイト(行)のなかで同じ単語や語句を数回繰り返すことによって、感情や行動を強調した。繰り返しの多用は言葉や内容を強調するばかりではなく、同じ音の繰り返しが新しいリズムを生み出す効果もある。また同じベイトを数行に渡って繰り返したり、場面転換の合図として聯の始めや聯と聯の間に同じベイトを挿入するのも得意とした。
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