フィルターつき複体のスペクトル系列とは? わかりやすく解説

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フィルターつき複体のスペクトル系列

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/19 09:14 UTC 版)

スペクトル系列」の記事における「フィルターつき複体のスペクトル系列」の解説

スペクトル系列極めて典型的な例フィルターつきの(英語版双対鎖複体から得られる。これは、双対鎖複体 C• であって全ての整数 p に対して部分複体 FpC• が定義されており、境界写像フィルトレーション両立している、つまり d(FpCn) ⊆ FpCn+1成り立つものである。(現実の例では p は上か下かどちらか片方有界であることが多い。)フィルトレーション減少している、つまり FpC• ⊇ Fp+1C• と仮定する双対鎖複体の項に対応する数字は n で表すことにする。あとではさらに、フィルトレーションハウスドルフ分離的とも言う)、つまり FpC• の全ての共通部分をとるとゼロであり、フィルトレーション覆い尽くしている(exhaustive)、つまり FpC• の全ての和集合をとると鎖複体 C• 全体となることを仮定するフィルトレーションは0への近さ測るものとして便利である。p が大きくなるにつれてFpC• はゼロに近づいていく。このフィルトレーションから、あとのシート行けば行くほどコバウンダリコサイクルが元の複体コバウンダリコサイクルに近づいていくスペクトル系列作れる。このスペクトル系列は、フィルター次数 p と補充次数complementary degreeq = n − p で2重に次数づけられたものである。(補充次数は全次数 n よりも便利な添字であることが多い。例えば、あとで説明する2重複体のスペクトル系列場合にそうである。) このスペクトル系列手作業作ってみよう。C• は単一次数づけとフィルトレーションしか持たないので、まず2重次数つき対象を C• から作る。第2の次数を得るために、フィルトレーション随伴する次数つき対象次のようにとる。 Z − 1 p , q = Z 0 p , q = F p C p + q {\displaystyle Z_{-1}^{p,q}=Z_{0}^{p,q}=F^{p}C^{p+q}} B 0 p , q = 0 {\displaystyle B_{0}^{p,q}=0} E 0 p , q = Z 0 p , q B 0 p , q + Z − 1 p + 1 , q − 1 = F p C p + q F p + 1 C p + q {\displaystyle E_{0}^{p,q}={\frac {Z_{0}^{p,q}}{B_{0}^{p,q}+Z_{-1}^{p+1,q-1}}}={\frac {F^{p}C^{p+q}}{F^{p+1}C^{p+q}}}} E 0 = ⨁ p , q ∈ Z E 0 p , q {\displaystyle E_{0}=\bigoplus _{p,q\in \mathbf {Z} }E_{0}^{p,q}} やや奇妙な書き方をしたが、こう書いた理由はあとで E1作るときに分かる境界写像フィルトレーション両立する仮定しているので、E0 は2重次数つき対象になっており、E0 上に自然な2重次数つき境界写像 d0存在するE1 を得るために E0ホモロジーをとる。 Z ¯ 1 p , q = ker ⁡ d 0 p , q : E 0 p , q → E 0 p , q + 1 = ker ⁡ d 0 p , q : F p C p + q / F p + 1 C p + q → F p C p + q + 1 / F p + 1 C p + q + 1 {\displaystyle {\bar {Z}}_{1}^{p,q}=\ker d_{0}^{p,q}:E_{0}^{p,q}\rightarrow E_{0}^{p,q+1}=\ker d_{0}^{p,q}:F^{p}C^{p+q}/F^{p+1}C^{p+q}\rightarrow F^{p}C^{p+q+1}/F^{p+1}C^{p+q+1}} B ¯ 1 p , q = im  d 0 p , q − 1 : E 0 p , q − 1 → E 0 p , q = im  d 0 p , q − 1 : F p C p + q − 1 / F p + 1 C p + q − 1 → F p C p + q / F p + 1 C p + q {\displaystyle {\bar {B}}_{1}^{p,q}={\mbox{im }}d_{0}^{p,q-1}:E_{0}^{p,q-1}\rightarrow E_{0}^{p,q}={\mbox{im }}d_{0}^{p,q-1}:F^{p}C^{p+q-1}/F^{p+1}C^{p+q-1}\rightarrow F^{p}C^{p+q}/F^{p+1}C^{p+q}} E 1 p , q = Z ¯ 1 p , q B ¯ 1 p , q = ker ⁡ d 0 p , q : E 0 p , q → E 0 p , q + 1 im  d 0 p , q − 1 : E 0 p , q − 1 → E 0 p , q {\displaystyle E_{1}^{p,q}={\frac {{\bar {Z}}_{1}^{p,q}}{{\bar {B}}_{1}^{p,q}}}={\frac {\ker d_{0}^{p,q}:E_{0}^{p,q}\rightarrow E_{0}^{p,q+1}}{{\mbox{im }}d_{0}^{p,q-1}:E_{0}^{p,q-1}\rightarrow E_{0}^{p,q}}}} E 1 = ⨁ p , q ∈ Z E 1 p , q = ⨁ p , q ∈ Z Z ¯ 1 p , q B ¯ 1 p , q {\displaystyle E_{1}=\bigoplus _{p,q\in \mathbf {Z} }E_{1}^{p,q}=\bigoplus _{p,q\in \mathbf {Z} }{\frac {{\bar {Z}}_{1}^{p,q}}{{\bar {B}}_{1}^{p,q}}}} Z ¯ 1 p , q {\displaystyle {\bar {Z}}_{1}^{p,q}} と B ¯ 1 p , q {\displaystyle {\bar {B}}_{1}^{p,q}} は、以下の写像 Z 1 p , q = ker ⁡ d 0 p , q : F p C p + q → C p + q + 1 / F p + 1 C p + q + 1 {\displaystyle Z_{1}^{p,q}=\ker d_{0}^{p,q}:F^{p}C^{p+q}\rightarrow C^{p+q+1}/F^{p+1}C^{p+q+1}} B 1 p , q = ( im  d 0 p , q − 1 : F p C p + q − 1 → C p + q ) ∩ F p C p + q {\displaystyle B_{1}^{p,q}=({\mbox{im }}d_{0}^{p,q-1}:F^{p}C^{p+q-1}\rightarrow C^{p+q})\cap F^{p}C^{p+q}} の E 0 p , q {\displaystyle E_{0}^{p,q}} における像としてかけることに注意する。これを使うと E 1 p , q = Z 1 p , q B 1 p , q + Z 0 p + 1 , q − 1 {\displaystyle E_{1}^{p,q}={\frac {Z_{1}^{p,q}}{B_{1}^{p,q}+Z_{0}^{p+1,q-1}}}} となる。 Z 1 p , q {\displaystyle Z_{1}^{p,q}} は微分するフィルトレーションレベル1つ上がるような要素全体になっており、 B 1 p , q {\displaystyle B_{1}^{p,q}} は微分するフィルトレーションレベルが0だけ上がるような要素全体の像になっているこれからZ r p , q {\displaystyle Z_{r}^{p,q}} は微分するフィルトレーションレベルが r 上がるような要素全体B r p , q {\displaystyle B_{r}^{p,q}} は微分するフィルトレーションレベルが r-1 だけ上がるような要素全体の像となることが推測できる言い換えると、作ろうとしているスペクトル系列の項は Z r p , q = ker ⁡ d 0 p , q : F p C p + q → C p + q + 1 / F p + r C p + q + 1 {\displaystyle Z_{r}^{p,q}=\ker d_{0}^{p,q}:F^{p}C^{p+q}\rightarrow C^{p+q+1}/F^{p+r}C^{p+q+1}} B r p , q = ( im  d 0 p − r + 1 , q + r − 2 : F p − r + 1 C p + q − 1 → C p + q ) ∩ F p C p + q {\displaystyle B_{r}^{p,q}=({\mbox{im }}d_{0}^{p-r+1,q+r-2}:F^{p-r+1}C^{p+q-1}\rightarrow C^{p+q})\cap F^{p}C^{p+q}} E r p , q = Z r p , q B r p , q + Z r1 p + 1 , q − 1 {\displaystyle E_{r}^{p,q}={\frac {Z_{r}^{p,q}}{B_{r}^{p,q}+Z_{r-1}^{p+1,q-1}}}} と書けるはずで、さらに関係式 B r p , q = d 0 p , q ( Z r1 p − r + 1 , q + r − 2 ) {\displaystyle B_{r}^{p,q}=d_{0}^{p,q}(Z_{r-1}^{p-r+1,q+r-2})} を満たすはずである。このようになるためには、各 Er 上の微分 dr であって、それによるホモロジー上記Er+1 と同型になるものを見つけなければならない。その微分 d r p , q : E r p , q → E r p + r , q − r + 1 {\displaystyle d_{r}^{p,q}:E_{r}^{p,q}\rightarrow E_{r}^{p+r,q-r+1}} は、 C p + q {\displaystyle C^{p+q}} で定義されている元々の微分 d を部分対象 Z r p , q {\displaystyle Z_{r}^{p,q}} に制限することで得られる。 この微分先程性質を持つこと、すなわち Er のこの微分によるホモロジーEr+1 となることは簡単に確かめられる。これで求めスペクトル系列得られた。残念なことに、この微分明示的とは言い難い。この微分決定するか、何かそれに代わる方法を見つけることが、スペクトル系列適用成功させるために必要なことの1つである。

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フィルターつき複体のスペクトル系列(続き)

出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/02/19 09:14 UTC 版)

スペクトル系列」の記事における「フィルターつき複体のスペクトル系列(続き)」の解説

包含関係の鎖(chain) Z 0 p , q ⊇ Z 1 p , q ⊇ Z 2 p , q ⊇ ⋯ ⊇ B 2 p , q ⊇ B 1 p , q ⊇ B 0 p , q {\displaystyle Z_{0}^{p,q}\supseteq Z_{1}^{p,q}\supseteq Z_{2}^{p,q}\supseteq \cdots \supseteq B_{2}^{p,q}\supseteq B_{1}^{p,q}\supseteq B_{0}^{p,q}} を考える。下記のように置くと、何が起きるか考える。 Z ∞ p , q = ⋂ r = 0Z r p , q {\displaystyle Z_{\infty }^{p,q}=\bigcap _{r=0}^{\infty }Z_{r}^{p,q}} B ∞ p , q = ⋃ r = 0B r p , q {\displaystyle B_{\infty }^{p,q}=\bigcup _{r=0}^{\infty }B_{r}^{p,q}} E ∞ p , q = Z ∞ p , q B ∞ p , q + Z ∞ p + 1 , q − 1 {\displaystyle E_{\infty }^{p,q}={\frac {Z_{\infty }^{p,q}}{B_{\infty }^{p,q}+Z_{\infty }^{p+1,q-1}}}} E ∞ p , q {\displaystyle E_{\infty }^{p,q}} がこのスペクトル系列収束先(abutment)の自然な候補である。収束自動的に従わないが、それでも多く場合収束する。特に、フィルトレーション有限で、ちょうど r 個の非自明なステップからなる場合には、スペクトル系列は r 番目のシート後で退化するまた、複体フィルトレーションがともに下、もしくは上に有界ならば、収束する考えているスペクトル系列収束先(abutment)をより詳細記述するために、次の表示 Z ∞ p , q = ⋂ r = 0Z r p , q = ⋂ r = 0 ∞ ker ⁡ ( F p C p + q → C p + q + 1 / F p + r C p + q + 1 ) {\displaystyle Z_{\infty }^{p,q}=\bigcap _{r=0}^{\infty }Z_{r}^{p,q}=\bigcap _{r=0}^{\infty }\ker(F^{p}C^{p+q}\rightarrow C^{p+q+1}/F^{p+r}C^{p+q+1})} B ∞ p , q = ⋃ r = 0B r p , q = ⋃ r = 0 ∞ ( im  d p , q − r : F pr C p + q − 1 → C p + q ) ∩ F p C p + q {\displaystyle B_{\infty }^{p,q}=\bigcup _{r=0}^{\infty }B_{r}^{p,q}=\bigcup _{r=0}^{\infty }({\mbox{im }}d^{p,q-r}:F^{p-r}C^{p+q-1}\rightarrow C^{p+q})\cap F^{p}C^{p+q}} を考える。この表示から Z ∞ p , q {\displaystyle Z_{\infty }^{p,q}} について何が言える考えるために、フィルトレーション分離的仮定していたことを思い出そう。この仮定から、r が大きくなると、(最初の式に出てくる)縮小していき Z ∞ p , q = ker ⁡ ( F p C p + q → C p + q + 1 ) {\displaystyle Z_{\infty }^{p,q}=\ker(F^{p}C^{p+q}\rightarrow C^{p+q+1})} となる。 B ∞ p , q {\displaystyle B_{\infty }^{p,q}} に対しては、フィルトレーション覆い尽くしている(exhaustive)と仮定していたことを思い出そう。この仮定から、r が大きくなると、(2番目の式に出てくる)像は大きくなっていき B ∞ p , q = im  ( C p + q − 1 → C p + q ) ∩ F p C p + q {\displaystyle B_{\infty }^{p,q}={\text{im }}(C^{p+q-1}\rightarrow C^{p+q})\cap F^{p}C^{p+q}} に到達する。以上をまとめて E ∞ p , q = gr p H p + q ( C ∙ ) {\displaystyle E_{\infty }^{p,q}={\mbox{gr}}_{p}H^{p+q}(C^{\bullet })} が分かりこれからスペクトル系列収束先(abutment)は C の (p+q) 番目のホモロジー次数が p の部分になっていることが分かる。このスペクトル系列収束するなら、 E r p , q ⇒ p H p + q ( C ∙ ) {\displaystyle E_{r}^{p,q}\Rightarrow _{p}H^{p+q}(C^{\bullet })} となることがわかった

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