フィルターとの関係
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2022/05/29 17:06 UTC 版)
有向点族が定義されたもともとの動機は「点列に関わる諸定理から可算性に関する条件を外す」というものであったが、同じ動機からフィルターという概念も生まれている。有向点族の概念とフィルターの概念は異なる研究者により同時期に独立に提案されたものであるが、実は収束性という観点から見たときには両者は実質的に差異がないものだという事実が知られている。 (以下、この節の記述はフィルターの基本的な知識を要求する。フィルターの項目も参照)。 以下の2つの定理はこの事実を定式化したものである。最初の定理は有向点族の収束はフィルターの収束によって捉えられる事を示している: 定理X を位相空間とする。このときX 上の有向点族にX 上のフィルター基を対応させる関数Iで次の性質を満たすものが存在する:任意のa ∈ X と任意の有向集合Λと任意の有向点族(xλ)λ∈Λに対し、 (xλ)λ∈Λがa に収束する⇔I((xλ)λ∈Λ)がa に収束する。 上の定理におけるIは以下のように定義できる: I ( ( x λ ) λ ∈ Λ ) = { { x μ ∣ μ ≥ λ } ∣ λ ∈ Λ } {\displaystyle I((x_{\lambda })_{\lambda \in \Lambda })=\{\{x_{\mu }\mid \mu \geq \lambda \}\mid \lambda \in \Lambda \}} I((xλ)λ∈Λ)がフィルター基の定義を満たす事は簡単に示す事ができる。 次の定理は逆にフィルターの収束は有向点族の収束によって捉えられる事を示している: 定理X を位相空間とする。このときX 上のフィルター基にX 上の有向点族を対応させる関数Jで次の性質を満たすものが存在する:任意のa ∈ X と任意のフィルター基 B {\displaystyle {\mathcal {B}}} に対し、 B {\displaystyle {\mathcal {B}}} がa に収束する⇔ J ( B ) {\displaystyle J({\mathcal {B}})} がa に収束する。 ただしIとJは逆関数の関係にあるわけではなく、 I ( J ( B ) ) = B {\displaystyle I(J({\mathcal {B}}))={\mathcal {B}}} は常に成り立つがJ(I((xλ)λ∈Λ))=(xλ)λ∈Λとは限らない。 Jの定義は若干複雑である。まずフィルター基 B {\displaystyle {\mathcal {B}}} に対し、集合 Λ B {\displaystyle \Lambda _{\mathcal {B}}} を Λ B = { ( A , x ) ∣ A ∈ B , x ∈ A } {\displaystyle \Lambda _{\mathcal {B}}=\{(A,x)\mid A\in {\mathcal {B}},~x\in A\}} により定義し、 Λ B {\displaystyle \Lambda _{\mathcal {B}}} に順序関係 ( A , x ) ≥ ( B , y ) ⇔ A ⊂ B {\displaystyle (A,x)\geq (B,y)\Leftrightarrow A\subset B} を入れると、 Λ B {\displaystyle \Lambda _{\mathcal {B}}} は有向集合とみなせる。 そこで ( A , x ) ∈ Λ B ↦ x ∈ X {\displaystyle (A,x)\in \Lambda _{\mathcal {B}}\mapsto x\in X} を考えると、これは Λ B {\displaystyle \Lambda _{\mathcal {B}}} を添字集合とする有向点族とみなせるので、この有向点族を J ( B ) {\displaystyle J({\mathcal {B}})} とする。
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