フィクショナリズム
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/09/15 14:19 UTC 版)
数学におけるフィクショナリズム(英: Fictionalism)は、1980年にハートリー・フィールドが『数を用いない科学』Science Without Numbersを出版し、その中でクワインの不可欠性論法を退け、実際に覆したときに有名となった。クワインは、数学は私たちのもっとも優れた科学的な諸理論のために不可欠であり、したがって独立に存在する事物について言及する真理の主要部として受け入れなくてはならないとしたが、フィールドは不可欠ではなく、したがって実在的な何者にも言及することのない虚偽であると指摘した。彼はこれを、まったく数と関数を用いることのないニュートン力学の完全な公理系を提供することによって行った。ヒルベルトの公理系(英: Hilbert's axioms)の「間にある」(英: betweenness)という概念を使って座標を付けることなく空間を特徴づけることをはじめ、それまではベクトル場によって行われていたことをするために点の間のさらなる関係を加える。ヒルベルトの幾何学は、それが抽象的な点について述べるため、数学的である。しかし、フィールドの理論においては、これらの点は物理的空間における具体的な点であって、そのため特別な数学的対象はまったく必要ない。 どのように数学を使うことなく科学を行うかを明らかにして、彼は、数学を役に立つフィクションという地位に復権させた。彼の示したところによれば、数学的物理学は、彼の非数学的物理学の保守的な拡大(英: conservative extension)の一つであり(つまり、数学的物理学で証明可能なすべての物理的事実は、彼の非数学的物理学体系ですでに証明可能であり)、数学はその物理的現象への応用がすべて真であるような信頼できるプロセスではあるが、それ自体の言明は偽なのである。したがって、私たちが数学を行うとき、万が一、数が存在するならばと、私たちは自分たちがある種の物語を語っているにすぎない。フィールドにとって、ちょうど「シャーロック・ホームズはベーカー街221Bに住んでいる」という言明が偽なのと同じように、「2 + 2 = 4」といった言明は偽なのである —もっとも、これらの両方の言明とも、適切なフィクションにもとづけば真ではあるが。 この説明によれば、数学だけに特有の形而上学的または認識論的な問題は存在しない。残された問題は、非数学的物理学についての一般的な問題と、フィクション一般についての問題だけなのである。フィールドのアプローチは非常に影響力があったが、今日では広く拒絶されている。これは、一つには、フィールドの還元を行うために二階の論理の強い断片(英: strong fragments)が必要とされるからであり、また彼の保守的な理論の言明は抽象的なモデルや演繹に対して量化を必要とするように思えるからである。他の異議としては、量子論や周期表のようないくつかの科学の成果を、数学なしでどのように得ることができるのかはっきりしない、というものがある。もし、ある元素を他の元素と区別するものが電子や中性子、陽子の数に他ならないならば、どのようにして数の概念なしに元素を区別すればよいのだろうか?[要出典]
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