パラメデスの弁明
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2021/06/13 04:19 UTC 版)
『パラメデスの弁明』の中で、ゴルギアスはロゴスを倫理的な議論を作るための実際的な道具だと述べている。 道徳ならびに政治の責任の問題を扱うこの本が弁明するパラメデス(パラメーデース)とは、ギリシア神話の中で、ギリシア文字、成文法、数、甲冑、物理単位を発明したと信じられている。 『パラメデスの弁明』の中で、パラメデスは反逆罪の容疑に対して自己弁明する。ギリシア神話において、オデュッセウスは(アガメムノンやメネラオスとともにヘレネをスパルタに連れ戻しに行くのを回避するため)気が変になったふりをして、野に塩を撒き出す。パラメデスはオデュッセウスの息子のテレマコスを鋤の前に投げることで、オデュッセウスのその嘘を暴いた。オデュッセウスはそのことでパラメデスを怨み、決して許すことなく、後になって、パラメデスがトロイア人と共謀したと告発した。その直後、パラメデスは有罪を宣告され、処刑された。 この誇示的な著作の中でゴルギアスは、『ヘレネ頌』同様、いかにしてもっともらしい主張がこのような疑わしい結果を招いたかを問題にする。 ゴルギアスは全体を通して、可能性のあることから、ロゴス的・エトス(倫理)的・パトス(情熱)的な主張が作られる方法を提示する。それは、アリストテレスの『弁論術』に類似している。『パラメデスの弁明』の中で描かれた動機と能力についての何タイプかの主張は、後にアリストテレスによって裁判に関するトポス(演説のための常套句)として述べられた。ゴルギアスは、反逆が行われたことを証明するために、それに伴って起こりうる一連の出来事も立証される必要があることを論証する。起こりうる出来事とは次のようなことである。パラメデスと敵との間の連絡、人質または金の形での約束の取り交わし、そして護衛または市民たちによって見つかるものではないこと。少額の金はそのような大きな仕事を引き受ける理由にはならない。もし多額な金で取引が成立したのなら、その金を移動するのに多くの共謀者の手助けが必要である、とパラメデスは主張する。さらに、そのような取引は夜にはできない、なぜなら護衛に見つかるからである。かといって昼間もできない。誰かに見られてしまうからである。もし前述の状況が実際に準備されるのなら、行動がその後に続く必要があるはずだ。そうした行動は、共謀者がいたか・いなかったか、どちらかで生じることが必要だ。もし共謀者が自由人(一般市民)たちであるとしたら、彼らは自分たちが望む情報を何でも暴露することは自由である。逆に共謀者が奴隷なら、自由を得るために自発的に、あるいは拷問によって力づくで、罪を認める危険がある。パラメデスは奴隷は信じられないと言う。パラメデスはさらに動機の可能性を並べ立て、どれも偽りだと証明する。 『パラメデスの弁明』を通して、ゴルギアスは動機には地位・富・栄誉・安全といった自分に利する点が必要だと論証し、パラメデスは動機を欠いていると主張する。
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