ハムレットの年齢
出典: フリー百科事典『ウィキペディア(Wikipedia)』 (2019/01/27 06:23 UTC 版)
「ハムレット (キャラクター)」の記事における「ハムレットの年齢」の解説
シェイクスピアの『ハムレット』第5幕第1場147行目以降、最初の墓掘り人夫は、「墓を作るようになってから」どれくらいになるのかとハムレットに尋ねられる。この質問に対する彼の答えによって、遠回しではあるがとても明確な方法でハムレットの歳が明らかになるようである。先王ハムレットが先王フォーティンブラスを破った日、「まさにハムレットが生まれた日」からであると墓掘り人夫は答える。そして少しして「私はここで教会の使用人を30年やっている」と付け加える。この論理によると、ハムレットは30歳でなければならない。死んだ道化師ヨリック(ハムレットはこのシーンのあいだ彼の頭蓋骨を持っている)は23年間土の中に埋まっているといわれており、そしてそのことはハムレットが最後にヨリックの背中に乗ったとき、ハムレットはわずか7歳であった、ということ意味する。 ハムレットの歳に関するこの見解は、初演でこの役を演じたリチャード・バーベッジは劇の初演当時32歳であったという事実によって支えられている。 しかしながら、『ハムレット』には複数版があり、この最初の段階においてハムレットは16歳という年齢で登場しているというケースもある。いくつかの証明がこの見解を支えている。ハムレットはヴィッテンベルク大学に通っていて、王家の人や貴族(エリザベス朝または中世デンマーク)は30歳では大学には行かなかった。それに加え、30歳の王子ハムレットは明らかに王位につくのにふさわしい年齢であろう。ハムレットがとても人気(クローディアスの発言による)なことを考慮すると、先王ハムレットが死んだあと王位継承に選ばれるのは叔父よりもなぜハムレットでなかったのかという疑問が浮かび上がってくる。 墓掘り人夫の経歴の長さについての行は、ハムレットの第1四つ折本(Q1)では言及されておらず、そのテクストにはヨリックは死んで12年だけ経っていると書かれている。さらに、おそらくシェイクスピアの話の種本の1つであるベルフォレでは、アムレートは成人していないといわれている。そして戯曲のための2つの権威のあるテキストのうちの1つである二つ折本(F)の最初のスペルのなかでは、「墓を作るようになってから」どれくらいなのかという質問に対する墓掘り人夫の答えは、"Why heere in Denmarke: I haue bin sixeteene heere, man and Boy thirty yeares.."。それらのコピーテクストがF1であると解釈される現代のテクストさえも、"Sixteene"というのは普通"sexton"(Q2の"sexten"が現代化されたもの)と訳される。しかし、現代のテクストではふつうであるモダナイズしたパンクチュエーションでは"Why heere in Denmarke: I haue bin sixeteene heere—man and Boy thirty yeares."となる。言い換えると、この解釈は、彼は墓掘りを16年やっているがデンマークには30年間住んでいる、ということを示唆している。この論理によれば、墓掘り人夫は30歳であり、一方でハムレットはまだ16歳ということになる。 しかし、教会使用人(sexton)と墓掘り人(grave digger)の違いも考慮しなければならない。教会使用人は、教会の周りやその周辺のエリアの様々な仕事を請け負う。墓掘り人はただ墓を掘る。教会使用人は墓を掘る人もいれば、掘らない人もいる。墓掘り人夫は30年間教会使用人をやっているが、その全ての期間墓を掘っているわけではないという可能性がある。これはこの登場人物の非常にまわりくどい話し方の一例なのかもしれない。 しかしながらこの解釈には欠点がある。二つ折本(F)ではヨリックが死んでからの期間は23年と言われており、つまりハムレットが生まれるときは既に死んでから7年経っているということになる。提案される他の理論は、戯曲は本来ハムレットが16、17歳と想定して書かれたが、シェイクスピアは戯曲を読まれるためではなく演じられるために書いたので、バーベッジ(シェイクスピアの劇で大方いつも主人公を演じていた)が役を演じられるようにこれらの行は変更された、というものである。
※この「ハムレットの年齢」の解説は、「ハムレット (キャラクター)」の解説の一部です。
「ハムレットの年齢」を含む「ハムレット (キャラクター)」の記事については、「ハムレット (キャラクター)」の概要を参照ください。
- ハムレットの年齢のページへのリンク